【黄昏のハーメルン】

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まさか、可愛がってもいない息子に、プレゼントでもするつもりか? 「あの」 声をかけている自分に自分で驚いた。 あれだけ怯えていた母に、自らこんな自然に声をかけるなど。 ありえない、と思いながらも、言葉は止まらななかった。 「そのゲーム機、もうすぐ後継機が出るらしいですよ。あとニ、三日ででるから、待った方がいいかも」 「あら、そうなの?」 近くで見る母は、醜かった。顔立ちは悪くないのだが、皺とたるみが酷い。 目鼻立ちが整っているだけに、それは異様に不気味に見えた。 「息子さんにプレゼントですか?」 尋ねると、 「そうなのよ。もうすぐ誕生日だから。いつもほったらかしだから、誕生日くらいはね。素直で可愛いいい子なのよ。言いつけもよく守るし」 破顔してそんな風に言った。 その時だ。 その瞬間。 俺の中に黒い渦が巻いた。 殺意だ。 俺を捨てた母が、今の子供は可愛がっている。 一度も会いにも来なかった母が、息子にプレゼントと言って破顔して笑っている。 許せない。 それは確実な嫉妬だった。
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