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醜い嫉妬だった。
的外れな嫉妬だった。
俺は、息子を殺してしまおう。
そう決めた。
そしてハーメルンと名乗って砂場に息子を迎えに行く。
そのまま高原のコテージに閉じ込めた。
夜中、ほたるに気づかれないように、母の様子をうかがった。母は、半狂乱になって息子を探していた。
俺の殺意は確実なものになった。
そして今日、ほたるは俺の言うがままに、自らスーツケースに入った。
そのまま殺されるとも知らずに。
哀れなほたる。
でも本当に哀れなのは俺の方じゃないか?
母にひとかけらも愛情を与えられず、爺と寝て金を得て、贅沢三昧のうち、中身だけ腐っていく。母より、ほたるより、俺は哀れじゃないか?
そう自分を憐れんでも、海は静かに凪ぐだけで、何も変わりはしないのだった。
そう、海。
この青い海に、スーツケースを投げ込めば、全て終わる。
俺の母への想いも、爛れて腐った俺の精神も、ほたるの命も。
全て流れて消えていく。
終わるのだ。
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