【黄昏のハーメルン】

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それでも、誰かが、僕を迎えに来てくれたことに、興奮していた。 こういうのを、待ってたんだ! これでいつもひとりぼっちのほたるじゃない! 誰にも愛されてないことなんてない! お母さんは、こうやって迎えをよこしたじゃないか! みんな一瞬でハーメルンに懐いた。 そういう、どこか人を惹きつけるところが、ハーメルンにはあった。 子供みたいな、大人の人。 女の人みたいな、男の人。 僕は、 「ハーメルンと一緒に帰る!」と言って、誇らしげに皆に別れを告げた。 ハーメルンは、手を繋いで嬉しそうに僕に微笑みかけた。 その微笑みは、今まで見たどんな微笑みよりも美しい。僕は、そう思ったのだった。 *** 「車で帰るの?」 不思議に思って、そう声をかけた。 だって僕の団地はすぐそこだったから。三角公園から歩いて十分もかからない。 なのに車で帰るって、おかしくない? 途端、ハーメルンが知らない人だということがくっきり浮かび上がった。 知らない人について行ってはいけませんよ。 学校の先生はよく言う。
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