【黄昏のハーメルン】

7/19
前へ
/19ページ
次へ
僕が一瞬警戒したときだ。ハーメルンは、 「夏休みの間、ほたる君は僕とふたりで生活するんだ。お母さんの頼みでね」 僕は、ますます怪しいと思った。それと同時に、もし本当だったら、お母さんが僕を厄介払いをしたかっただけだったのではないか、と思って悲しくなった。 と、ハーメルンがにやりと笑って言った。 「その代わり、お母さんから誕生日プレゼントを預かってるよ。楽しみにしてなよ」 ハーメルンは僕の誕生日を知っている! やっぱりお母さんに頼まれたんだ! そう思って胸を撫でおろすと同時に、お母さんに誕生日を祝ってもらえないのを寂しく思った。 「君は今、お母さんに誕生日を祝ってもらえないのを、寂しく思ったろう?」 「え!?どうしてわかったの!?」 「子供なんて皆同じさ。誕生日は、一等大好きなお母さんに祝ってもらいたいものなんだ」 「ハーメルンもそうだった?」 「ああ。俺もそうだった」 「そっか」 「その代わり、俺が目いっぱい祝ってあげるから、それで勘弁してくれよ。今までで一番楽しい誕生日にしよう」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加