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 神奈川県在住の主婦Aさんが失踪したのは、深夜二十三時。そのときAさんは、友人B氏との電話の最中だった。突然、Aさんの声が聞こえなくなったが、その電話の内容がAさんのスマートフォンの不調に関するものだったため、B氏はスマホの故障だと思い、電話を切ってしまった。  しかし結果的に、最後にAさんの声を聞いた人間は、このB氏になってしまったのだが、B氏自身はそんなことは知る由もない。  Aさんの失踪は地元新聞の小さな記事にしかならなかった、言うなればごくありふれた事件だが、本誌のこのコーナーで取り上げるということは、実は世間には知られていない事件の裏があるということだ。  Aさんが失踪直前までB氏と電話をしていたことは先述のとおりだが、実はこのところ、電話の最中に失踪したという事例が、全国各地で起きているのだ。いずれも失踪した人間は電話の最中か終了直後であり、同じ型のスマートフォンを使っていた。そして、現場には失踪者の痕跡はなく、スマホだけが残されていたのである。そしてこの取材の直後、B氏も姿を消してしまったのだ――
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