電話、待ってた。

3

　あ、もしもし、編集長？　記事の出だしはこんなもんでどうです？
　え――信憑性はあるのかって言われたって、そんなものがあったら俺みたいな三流ライターが、『今週のオカルトコーナー』なんかで取り上げたりしないでしょうよ。でしょ？　
　いや、編集長、笑い過ぎっすよ。
　ああ、後半っすか、それはこれから。展開としては、スマホに何か仕掛けがあるとかじゃなくて、スマホの中に人を食うバケモノが棲んでるって筋書きです。ほら、失踪者は全員、電話のあとに失踪してるんですよ。スマホって、電話として使うより、ラインとかネットとか動画とか、顔に近づけずに使ってる時間が長いでしょ？　電話のときだけは顔に近づけるんすよ。だから、その怪物は、そのタイミングを待ってて、頭からバク――ッと一飲みですよ。
　いや、だから信憑性なんかどうやって証明するんすか。そんなの無理っす。裏付けが必要な記事なら、俺みたいな三流オカルトライターに頼まないでくださいよね。ほぼ妄想っすよ、オカルト記事なんか。読者にウケればそれでいいでしょ。
　ねえ、編集長、聞いてます？
　編集長――？