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両親は無理に僕を学校に行かせようとはしなかったし、あの日の出来事も含め、なにがあったのかは無理に話さなくてもいいと言ってくれた。そして、今の学校に行きたくないならと別のところに転入手続きをしてくれた。 怖かった。大人に組み敷かれる恐怖はもちろんだが、何より自分の言葉でまた、今度はとりかえしのつかないことが起こるのではないかと思った。 そして、何より皆に向けられる視線が怖くてたまらなかった。僕にとって学校という存在そのものが恐怖でしかなかった。 転入の話を聞いて僕は初め行き渋ったけれど、両親の説得もあり、一度だけ勇気を出して行ってみることにした。 その転校先で僕は修平と出会った。 「女みたいだ」と揶揄う同級生を牽制して、修平は僕に自己紹介をして握手を求めた。修平は「何かあったら俺に言え」そういってニカッと笑った。握られた手は同い年のはずなのに僕よりずっと大きくてひどく温かかったのを覚えている。 Ωである母譲りの容姿がずっとコンプレックスだった。同級生と比較しても小さな体、軟弱な体、僕は自分のすべてが大嫌いだった。 だからこそ、男らしくて、正義感にあふれた修平は僕の憧れだった。 修平はいつも僕を守ってくれた。上級生に絡まれたときも、ジャングルジムから落ちそうになった時も、僕が危ない目にあっているのを見るとすぐに駆け付けて僕を守った。僕が困っていると誰よりも先に僕を助けてくれた。修平は僕のヒーローだった。 修平が僕を守ってくれる、そんな安心感が僕のトラウマを少しずつかき消していった。それはある種の依存にも近かったのかもしれない。僕は常に修平と共にありたいと願った。(もちろんそれを言葉にすることはなかったが。)だからこそ、修平が僕以外にも同じように優しくしているのを見ると心がざわざわした。修平は僕だけのヒーローじゃないことに気が付いてなんだか泣きそうになった。 そのことを両親に話すと、母が優しく笑って言った。 「幸君は本当に修平君のことが大好きなのねえ」 その言葉を聞いて僕はようやく腑に落ちた。そうか、僕は修平のことが大好きなんだ。他の誰にも渡したくないと思うくらいに。
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