‐4‐

2/2

149人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
僕は結局自身のバース性を隠したまま今も修平の隣にいる。もういっそこのまま隠し通せたら、なんて先送りにしていたしわ寄せはある日突然に最悪な形で表出した。 Ωである限り、修平は僕を守るべき対象としてずっと傍にいてくれる。そんな不純な動機に神が罰を与えたのだろうか。 修平にΩの初潮が現れたのは大学一年の秋のころ。 修平はΩであることを中学のあの日、受け入れたものだと思っていた。けれど、頭で理解することと実際に体が経験することは全くの別物なのかもしれない。大学で発情期の初潮が始まり気絶した修平は病院に運ばれた。 そして、目を覚まして開口一番修平が口にしたのは別れの言葉だった。 「別れよう」 目の前が真っ暗になった。かすれた声でなんとかその理由を問う。 「どうして・・・」 「もう俺はお前を守ってやれない。お前にはきっと俺よりふさわしい人がいる」 修平は優しい、今この言葉も僕を想ってのことだと分かる。でも、だからこそ修平は僕が泣きすがっても簡単に折れてはくれないだろうと思った。 同時に、そんなに簡単に、僕の言葉一つ聞かないで勝手に答えを出した修平への憤りもあった。 「…修平がそれを言うの」 修平よりふさわしい人って誰?そもそも守ってほしいなんて頼んでない、僕は修平が自分を守ってくれる存在だから好きになったわけじゃない。 修平の口から違う誰かとの未来を促す言葉が出たことも、僕を拒絶するかのような言葉が出たことも僕には耐えがたく苦痛だった。 僕はこれ以上修平の口から何かを聞きたくなくて病室を飛び出した。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加