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僕は病院を出たその足で実家に帰り自室に引きこもって泣いた。 修平の今日の言葉を何度も頭の中で反芻して、修平と過ごした過去を思い返した。 これは罰だ、冷静になって僕は後悔の念に襲われる。 修平にあんな言葉を言わせてしまったのは間違いなく僕自身だ。 守ってほしいなんて頼んでないなんてどの口がいう。確かに僕が修平に直接そう頼んだことはなかった。けれど結局のところ僕は修平に守られることが酷く心地よくて、この関係に胡坐をかいていた。僕は自身を修平に守るべき対象と思わせることで縛り付けた。、修平は何も悪くない、「守る修平と守られる僕」この関係に固執したのは僕自身であり、僕の身勝手が引き起こしたことだ。 僕は何の努力もしないで、修平の優しさに付け込んで修平の隣に居座った。その罰だ。 僕がいなくなったら別の誰かが修平の隣に並ぶのだろうか。「僕よりふさわしい」その誰かに修平は笑いかけるんだろうか。想像しただけで胸がずきずきする。 その時、部屋の扉がノックされる。「入ってもいいかしら?」柔らかな母の声がした。 ぐすっと鼻をすすってから扉を開ければ、母は「あらあらこんなにも泣き腫らして」と困ったように笑って、僕の頬の涙を拭いて、ベッドの上に座らせた。 「それで一体何があったのかしら?」 「…修平と別れた」 その言葉に母は驚いた様子で息をのむ。 「自分にはもう僕を守れないから、僕にはもっとふさわしい人がいるからって」 「そういわれて大人しく引き下がったの?どうして?」 「それ以上修平の口からそんな言葉を聞きたくなくて」 「そう…その程度の覚悟ならあきらめてしまえばいいんじゃないかしら、修平君も言うようにあなたにもそして彼にももっとふさわしい人がいるわ」 その言葉にぐっと言葉を詰まらせる。それは正論なのかもしれない。それでも僕は。 「…嫌だ」 「あら、どうして?」 それでも僕は修平じゃなきゃ嫌だ、修平の隣を誰にも渡したくない。 他にふさわしい人がいるかどうかなんて関係ない、僕が修平にふさわしい男になる、誰にも負けないくらい、誰にも文句をいわせないくらい。 もう僕は修平を一人で戦わせたりなんてしない、守られてばかりの泣き虫な僕ではだめだ。 僕は涙をぬぐって顔をあげた。 「答えは出たみたいね」 母の問いに僕は力強く頷いた。 「うん、ありがとう母さん」 僕の言葉に母は「男の子の顔ね」と嬉しそうに笑った。
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