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「ねえ、いつまで修平に触ってるの」 僕の大切な人に触らないでくれるかな、僕の言葉に修平を押さえつけていた男がびくりと体を硬直させる。拘束が緩み這い出すように拘束から逃れた修平は何か言いたげに僕を見あげた。 僕は修平の前にしゃがみ込みそっとその頬を撫でる。頬が腫れ、口の端が切れている。 修平を傷つけた男たちへの怒りとここまでになる前に助けに来られなかった自分自身への不甲斐なさに唇を噛む。 「遅くなってごめんね」 僕の言葉に修平は首を振る。きっと修平のことだ、「こんな傷大した傷じゃない」と明日には笑うんだろう、修平は優しいから自分を傷つけたこんな男たちでさえも謝られたらあっさりと許してしまうんだろう。 だからこそ僕は許さない。 「もう大丈夫だから、眠っていいよ」 修平は何も知らなくていい、僕が耳元で静かにそう囁けば修平はかくりと眠った。 「さて」 僕はようやく男たちを振り返り、「命令」を下す。 「全員地面に膝をついて許しを請え」 いつも大学内を我が物顔して好き放題している顔ぶれが皆一斉にその場にはいつくばって頭を下げる、その光景は酷く滑稽だ。 「これは確認だけど、今回の首謀者は誰?」 僕の問いに皆が一斉に同じ男へと視線を向けた。その視線の先にいるその男が「藤崎」だろう。 僕はゆっくりと藤崎に歩み寄り、藤崎を見下ろす形で目の前に立ち止まる。 「もうわかると思うけど、僕は今この場にいる全員に「命令」を下せる」 僕の声が聞こえるこの場の全員が僕の支配下にある、当然僕の命令に背いて僕の声が聞こえないように小細工することも不可能だ。つまり、僕の意志によって眠りについた修平以外の全員がその対象だ。 「この意味が分かるかい?お前達の今後の未来も、そして命さえも僕の手のうちにあるということだよ」 僕の言葉に藤崎の手が震えだす。ここまで言われてようやく自身のおかれている状況に気づいたか、頭の悪い奴だ、僕は内心呆れながら言葉を続ける。 「お前達は僕を怒らせた、ただでは済まさない」 そして命令を下すべく口を開いた、その時。 「幸也…」 修平の声にはっと我に返る、いや、もともと我を忘れていたわけではない、僕は冷静な自我状態にあって尚この男たちが苦しめばいいと願った。けれど修平の声が僕にそれを躊躇させた。 修平へと視線を向ける、目を覚ましたわけではなさそうだ、ただ夢現に僕の名を呼んだらしい。それはまるで僕を止めているかのように思って僕はため息を一つ。 「…もう二度と僕と修平の前に姿を現すな、そして今日ここであったことを他言することは許さない」 僕の一声によって支配から解放された男たちは逃げるようにして我先にと教室を飛び出していった。
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