149人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
不完全な僕等の恋の行方
幼いころ、母に読んでもらった物語はいつもどこか退屈だった。それは母が好むラブストーリー。何冊か読んだ記憶はあるが、その結末はいつも変わらない。Ωはαによって幸せになる、所謂シンデレラストーリー。Ωは自身の唯一を待ち続け、αはΩを探し求める。そしていずれ出会い、恋をして、幸せになる。
その結末が僕は嫌いだった。
物語も現実も、実際は似たようなもの、皆一概に定められたバース性に従って恋をして結婚する。それは一見幸せなのかもしれない。けれど、それはどこか遺伝子に踊らされているかのような恐怖があった。αでありながらもΩの容姿を持つ僕には猶更それが理解できなかった。
なぜそうでなければならない。誰が決めた、αの幸せを、Ωの幸せをなぜひとくくりにしようとする。
結局僕等も傍から見れば物語と同様にαとΩの何ら変哲もない恋人関係には違いないのかもしれない。けれど、そこには決してひとくくりにはできない多くの思い出と積み上げた過去がある。
勿論、僕等は決して遺伝子に踊らされてなどいない。僕はきっと修平がどんなバース性であったとしても恋に落ちていた。
語れるほど多くの恋愛をしてきたわけでもないけれど、きっとつまりはこういうこと。
一見同じように見える恋人たちにもそれぞれの思い出と積み上げた過去があって、今がある。
当然これから先もずっとうまくいくなんて保証もない。だからこそ、僕等は何度もぶつかって、時には立ち止まって喧嘩して、たくさん話をして、共に人生を歩いていく。
それははたから見ればどこにでもある退屈なラブストーリー。でもそれこそが僕等の選んだ恋の行方。
最初のコメントを投稿しよう!