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中学二年の時、開いた第二の性の通知に俺は瞠目した。 プリントミスかそれとも何かの手違いで誰かのものと入れ替わってしまったのか。本気でそんなことを考えるほどに俺は「Ω」であるという事実が受け入れられなかった。 中学に上がってもなお俺の体格はΩと言われて納得できるような軟なものではなかった。柔道を始めたというのもある。誰よりも強くなって大切な人を守る力を俺は求めた。誰にも負けない自信があった。 俺は両親と共に病院で再度診てもらうことになった。中学になるとどの学校でも医師によって第二の性を検査し診断してもらえる。しかし学校という大人数の検査だ。データがどこで他の生徒と混ざってもおかしくはない。まあ、本当にそんなことがあれば大問題なのだが。 そのため俺は両親に相談し、再度検査してもらうことにしたのだ。 しかしその結果も変わらなかった。両親は俺になんと声をかけていいのか困っている様だった。俺はそんな両親に「第二の性バース性なんて大したことない」そう強がったが、数日間眠れない夜を過ごした。 「修平、最近どうしたの」 昼休み、屋上で幸也が俺の心配そうに尋ねた。「なんでもない」そう笑ってごまかそうとしてもうまく表情がつくれない。いつものように笑えない。そんな俺を幸也はじっと見つめてたどたどしく口を開く。 「僕じゃあ頼りないかもしれないけど。修平が苦しそうだと僕も苦しい」 よかったら話してほしい。いやだったら無理に話さなくても構わない、でも傍にいさせて。 幸也の言葉に俺は覚悟を決め、第二の性の通知書を幸也に見せた。幸也も少し驚いたような顔を見せたが、それ以上は何も言わなかった。 「俺、Ωだった」 「うん」 幸也は優しく頷く。 Ωを差別していたわけじゃない。下に見ていたわけでもない。ただ、その存在は俺にとって「守るべき対象」であり、自分とは相いれない存在だと思っていた。 Ωである俺はもう皆を守る資格はないのだろうか、幸也を守れないんだろうか。 「俺のしてきたことは無駄だったのかな」 何の意味もなかったんだろうか。誰よりも正しくあろうとした、強くあろうとした。そのために費やした時間も努力も何もかも、無駄だったのだろうか。 「Ωだろうとなんだろうと、修平は今も昔も僕のヒーローだよ」 幸也のその一言に涙があふれた。どんな一言よりも救われた気がした。無駄じゃないと言われた気がした。それはまるでこれからも変わらずに傍にいてほしいと言われてるように思えた。俺にとって弱い人を守ることは義務であり、当たり前のことだった。それは兄である自分が妹たちを守るのと同じだった。 けれど、幸也に対しては必要以上に世話を焼く自分がいた。自分の妹たち以上に過保護になった。その時俺は初めて幸也への他とは違う想いを自覚した。 「俺はΩだけど、それでもお前を守るよ」 それは幸也への誓いであり、自分への決意でもあった。 俺の誓いに幸也は幸せそうに頷いた。
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