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高校に上がり、それでも俺たちは共にあった。 幸也は出会ったときと変わらず小さくてかわいい。それに加え最近は酷く色っぽくなった。悩まし気な吐息一つに皆が顔を赤らめた。柔らかな微笑みに皆が魅了された。 多くの者が幸也に詰め寄った。想いを告げた。しかし幸也はがんとして首を縦には振らなかった。「好きな人がいるから」と、ただいつもそう断りをいれた。当然幸也を無理やり手に入れようとする輩も多かった。俺はそれを一網打尽にし、周囲からは幸也の最強のボディガードとささやかれた。 出会ったときと何一つ変わらず俺は幸也に接した。自分の幸也へ抱く想いが他とは違い、それが恋心であることも分かっていた。けれどそれを伝えることはできずにいた。自分はΩだ、例え自分が同じΩである幸也に恋心を抱いたとしても、幸也もそうであるとは思えない。そもそもΩ同士の恋愛など普通ではないのだから。 幸也の好きな相手が誰なのか気になりつつも、常に傍にいながら聞けずにいた。 しかしふと唐突に思う、自分が幸也の傍にいることは幸也の恋路の邪魔をしているのではないだろうか。 自分が常に傍にいたら幸也は好きな相手との接触が図れないのではないだろうか。 気を遣う、なんて器用なことはできない。かといってうまく伝えることもできない。 「幸也、俺はお前から離れるべきか?」 「なんでそんなこというの」 俺の一言に幸也は声を震わせた。俺はわたわたと慌てて補足する。 「幸也には好きな相手がいるんだろう。四六時中俺と一緒にいたらその相手に申し訳ない」 俺の言葉にとうとう幸也の目から涙が零れ落ちた。俺がどうすればいいのか戸惑っていると、幸也はキッと俺をにらみつけ俺のネクタイを強く引っ張った。その不意打ちに声をあげるより先に俺の唇に柔らかな感触がした。目の前には幸也の顔がある。吐息が顔を撫でる。 一瞬で離れた幸也の唇を思わずじっと見てしまう。何が起こったのかわからず、数秒呆然とした。 「この鈍感」 拗ねたような責めるような口調、けれどその顔は照れたときに見せる表情。 どうしてこんなにも可愛いんだろう。どうしてこんなにも愛おしいんだろう。思わず俺の顔が緩む。俺はその唇に今度は自分からキスをして「好きだ」と伝えた。幸也は「知ってる」と笑った。 その日から俺たちは恋人になった。
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