【七月の殺人】

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「つか、ユラギ、おまえ相変わらずぶっとんでんな。夏空探索、俺もざらっと読んだが、そんな話じゃねーぞ。カエルがネコに恋をして、実らない想いを空になぞらえる話じゃねーか。 少年、どっからでてきた。おまえの脳味噌大丈夫か?」 「えー、でも、俺にはこう感じるんだもーん。 てか、読んだんじゃん!先に言ってよ!読んだんじゃん!」 ユラギが膨れて言うのを聞き流しながら、内心で俺は舌を巻く。 曲がりなりにも文章に携わるものとして、ユラギの感性の強さには嫉妬さえ覚える。 こいつ、バカだけどすげぇのか? つい、そう思ってしまう。 そんなこともあって、俺はこいつを拾ったあの日から、手放せなくて、二年もそばに置いて養ってる。 まあもちろん、ユラギの感性に惹かれて、ってだけではないのだが。 「…散歩、いくか?外は天気だし、いい風だ。」 唐突に呟くと、弾かれたようにユラギが微笑む。美しい、透明な笑顔。 俺はその笑顔を見ただけで、胸が弾む。 男にしては線の細い造形、類をみない美しい顔立ち、透明感。 同性であっても、ユラギに惹かれないものなど、世界中どこを探してもいない気がした。
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