あー、あの日の、わいの冒険1年生 その7「雪ちゃんのお迎え」

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「じゃ、読むね」 「よし、きた!」  雪ちゃん、再び気合を入れます。 「おじいさんが、かぶの たねを まきました……」  夏生が元気に読んでいきます。おじいさんが「あまいあまいかぶになれ」と願って育てると大きなカブになります。 「ほほー、そりゃええな。そのカブ、家でも植えたいな」  おじいさん、カブを抜こうとしたけれど、けれどもカブは抜けません。 「そんなにでっかいカブか、じゃ、ベランダ菜園は無理やな」  そこでおじいさんはおばあさんを呼び、おばあさんがおじいさんをつかみ、おじいさんがカブをつかんで引っぱっりましたが、カブを抜くことはできませんでした。 「それはやばいな。ぎっくり腰に気をつけな。ばーさん腰弱いからな」  おばあさんは、まごを呼んできました。 「お、その絵は女の子やな。芽生の登場や。頑張れ、芽生!」  姉ちゃんがやってきて。 「呼んだ?」と聞いてきました。 「芽生姉ちゃんも聞いてやってくれ」  雪ちゃんは手招きをしました。 「ウォホン」と咳払いした後、夏生が続ける。  しかし、このあとおかしな事になってくるのです。  なんと、まごは犬を呼んできたのでした。 「いやいや、犬は引っ張らんやろ」 「ええから、じっちゃん」  と言うと夏生は、そのまま大きな声で物語を読み進めていきます。  そやけど、やっぱり犬は引っ張らんやろ、そして、なんで犬が猫を連れてくんねん。言葉はどうなっとんねん?謎が謎を呼んで、気になります。  そして最大の謎? 「なんでネズミやねん? 猫がネズミを呼んでくるってありえんやろ」  「とうとう、かぶは ぬけました」 「な、なんと!!!」  夏生が、こっちを見ます。 「で?」  と、雪ちゃんはその先を求めました。 「え?」 「抜いたカブはどうした?」 「おわり」  と夏生が返します。 「なんでやねん!」  と雪ちゃんが突っ込みましたが、夏生も芽生姉ちゃんも答えてくれませんでした。  かわりに芽生姉ちゃんが真顔でシレッと重大なことを言いました。 「あー、それカブが抜けへんの。なんか、実は先頭のじっちゃんがカブを踏んでるから、抜けへんらしいよ」 「えっ?」  雪ちゃんと夏生は、挿絵をじっと見つめました。 「ほ、ほんまや」 (※諸説あります。というより、多分そんな事はありません。原作者さん、絵師さんごめんなさい。)  雪ちゃんは、気まずくなって話題を変えようと思いました。 「まあ、でも、ええお話やな。困った時もみんなで協力すればどうにかなるって事や。ネズミはいらんけど」  と言うと、雪ちゃんはカブを引っ張る真似をしました。そして後ろを見ます。 「お婆さんが引っ張って…… まずはお婆さんが引っ張って…… って、あかん、……おらん」  雪ちゃんは、自室の片隅にある仏壇。  そして、その上の遺影をみました。  ばーちゃんこと、梅江(うめえ)さんは、4年前、夏生がまだ小さい時に、お空の上に旅立って行きました。 「わいがおるで。わいが引っ張る」  夏生が、雪ちゃんの後ろについて引っ張ってくれます。 「それに、うちには父ちゃんと母ちゃんもおるで、十分ちゃう。多分、抜けると思う」  ニカっと笑う夏生でした。 「……」  ありがとう夏生。  たまに夏生に言葉にハッとします。 「じっちゃん、感想書いて、ハンコ押して」  と読書カードを渡されました。  雪ちゃんはジーと考えました。  やはり、ここは一番最初に感じたインスピレーションが大事だと思うのです。 「感想『カブが抜けて良かったです。どうやって大きなカブを食べたか気になります』っと」 「じっちゃん、それ物語の感想や。読書の感想ちゃう ……でも、ま、ええか。先生も気になってるやろ」 「先生のコメントが気になるわ。ッフ」  と芽生姉ちゃんが鼻で笑い。  雪ちゃんと夏生もつられて、鼻で笑いました。  先生のコメントに期待です。
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