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出会い
戦場には似合わない神聖儀式を受けてから飛行機に乗る。
自分が飛行機に乗ることやこんなに期待されて重要な任務を承るなんて1ミリも思わなかった。
自分にはこれから名誉ある死が待っている、それが運命なのだろうと覚悟を決めた。
気がついたら自分はとある建物の前に寝ていた。
目についたのは手作りと思われるほっこりとした看板。
「喫茶交差点?」
変わった名前の喫茶店に首をかしげていると、目の前の扉が開いた。
「あら、お客さん。今起きたばかりかい?」
喫茶店の人なのだろうか、若い女性が微笑む。
黒髪で後ろに1つ束ねただけの地味な女だが、どこからか故郷のお袋を感じさせるほんわかとした雰囲気が漂う。
「お客って、まあ、そうですが」
先程までの記憶を振り返りながら自分は考える。
自分は国の命運をかけて飛行機に乗り、特攻隊としての役目を果たそうとしていたはずだと。
その役目は命を散らすもの、自分はそれを全うしていったはずなのだが生きている。
「とりあえず中に入りゃー、適当に茶でも出すから」
鉛のように重かった身体を起こして店に入る。
「な、なんじゃこりゃあ!」
店内を見た自分は驚いて声を上げた。
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