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謎の店
さまざまな人がいる。
甲冑を纏う武士もいれば、十二単を着た髪の長い女性もいる。
肌が黒く、髪と化粧が派手な若い女性など見慣れない人たちがいた。
なんだこれは、劇でもやっていてその集団が訪れているのかと思うくらい客のクセが強い。
「さてと、お客さんあっちに行こうかね。相席になるがいいかい?」
「あ、ああ」
よくわからないまま窓側の席に案内される。
身なりがきちんとしたおじいさんと相席をすることになった。
「失礼します」
「こんにちは」
紳士はにっこりと微笑む。
ほんわかとした表情を見ていると自然と自分の固かった表情も柔らかくなっていった。
こんな時穏やかな時を過ごしたのは久しぶり。
ずっと平和な世界から自分は離れていたのかと実感した。
「お客さん、とりあえずどうぞ」
「ありがとうございます。あの、ここって」
と武士たちを見ながら質問すると、彼女はにこっと説明する。
「ここは様々な時代の人が集まる店なんですよ。交差点という名前をつけたのもそれが理由ですね」
と名刺を渡してきた。
喫茶交差点マスター 風間都梨子。
この女性が一人で切り盛りしているようだ。
トリコなのか、この変わった喫茶店には似合うくらい見慣れない名前だ。
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