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おじいさんが待っていた相手
青年が帰った後。
「どうだったかい?過去の自分に会った感想は」
風間は老人に尋ねると、彼は気はずかしそうに笑った。
「若いねえ、当たり前だけど」
老人は特攻してから今までのことを振り返る。
海に落ちた自分は米兵に助けられ、英語やらあらゆることを学んだ。
それからしばらくして日本に帰り、仕事をしたり家庭を持ったりして今に至る。
彼の心には生死を彷徨っていた間に体験した喫茶交差点の思い出が残っていた。
「あの人全く未来の自分だと気づかなかったねえ。目元は似ているのに」
「まあ、あの頃の自分にはこんな未来が待っているなんて知らなかったからね」
絶望しか知らなかったあの頃、生きては帰れないところに出ることになった青年だった紳士はまさか自分がこんな都市人sっても生き続けるなんて思わなかったのだ。
あの頃はあんな風に純粋で何もかも信じながらも、少しだけ不安を持っていたものだと懐かしく思う。
「最後の思い出に良いものを見れたよ」
「よかったね。ここでしばらく待ってた甲斐があったねー」
老人は命の最後に叶えたいものがあった。
もう一度喫茶交差点に行くこと、そして過去の自分に会うこと。
「さてと、そろそろ私も行こうかね。ずっと長居してすまなかったね。風間さん」
「気にするなよ、お客さんの要望を叶えるのはあたぼうなことだよ」
扉が再び開かれる。
老人は最後に風間に頭を下げてから歩きだした。
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