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「多華子さん。指輪、つけていい?」 「あ、はい。おねがいします」 目いっぱい伸ばしてくれた指先をそっと取って、シンプルな小粒のダイヤの指輪を薬指にはめた。ダイヤがキャンドルの光を反射して、光った。 「はい、どうぞ」 指をぴんと伸ばして、眺めている。 ピアスやネックレスはしているのを見るけど、あまり指輪をしているとこを見たところがない。気に入ってくれると良い。 「上原が選んで、買ってくれたの?」 気に入らなかっただろうか。 これも選んだ方としては緊張する。 「そうですけど、それでよかったですか?指輪、限度がないし、よくわからなくなりかけましたけど」 給料の何か月分なんていうけれど、お嬢さんに見合うものをとおもったら、限度がなかった。 それでも、指輪だけに貯金を使うわけにもいかないから、自分が、多華子さんがしてたらいいな、と思うシンプルなデザインとサイズ感にした。 「うん。すごく、すごく嬉しい。素敵。ありがとうございます」 指輪を右手でそっと撫でてから、丁寧にお辞儀してお礼を言われた。 「気に入ってくれて、良かったです」
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