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専業主婦歴10年の菊地 志穂(きくち しほ)34才。 現在、夫と4人の子どもを育て生活をしている。 この家庭も例にもれず、夫は職をなくし途方に暮れている家庭の一つである。 しかし、主婦のいる家庭、または家事業務をこなしている男性は給与という形でAIから金銭を払われるため世の専業主婦といわれる女性たちは歓喜した。 私たちがしていたことは給与が出て当たり前の仕事をしていたということを。 それまでの専業主婦といえば、家の生活全般を任され生活をするのだが、一方ではお荷物的な暗黙的了承が世間にはびこっていた。 仕事という形で社会貢献をする男性の給料をありがたく受け取り、主婦に与えられるお小遣いは個人差はあるものの、志穂の家庭では主婦にお小遣いという概念もなく、ただただ必死に毎日を家事育児で終わらせていた。 自分たちの欲しいものは夫に確認を取り、了承を得て初めて買うことができた。物にもよるが自己判断で勝手に買ったものはことごとく争いの種になり、返品や自分の金で払うように強要された。 毎日、必死に家族のために動いているのに……。悔し涙や怒りがこみあげてくる。苦汁を飲まされている感覚になってくる。 志穂も喧嘩の際に夫の学(まなぶ)から「文句を言うなら俺と同じくらい働いてから言え」と言われたり、好きなことをしたくても「そんなものに俺は払いたくない」と言われるので結局、我慢せざるを得なかった。 それが、AIの時代に変わったとたん立場が逆転したのだ。 そんなことを考えもしなかった愚かな世の男性諸君は絶望という言葉だけでは片づけられないほどの苦悩を味わっていることであろう。 恐ろしいことに多くの家庭では虐げられていたといわんばかりに主婦が夫に対して攻撃的になったり立場逆転したことによって主婦の逆襲が襲い掛かってきた。 世の男性たちはAIに抗議するが「そのほうが効率的であるということ」「主婦の方たちの行いは今まであなたたちが彼女にしてきた行いですよね?因果応報ですよ。」と言い捨てられてしまった。 まさか機械ごときに言われるなんて。 男性たちはこれまで上下で見ていた家族関係がすでによくないということをいまだに理解できずにいる、または理解はしていてもこれまでの考え方の修正には尋常でない努力が必要となることが男性たちには途方もない荒野に立たされたような心境になっていた。
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