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専業主婦たちの給与はAIが支給していた。
彼女たちに直接支給できるように通帳口座もAIが管理し、夫の干渉がないようにされていた。
彼女たちは時代の変革に一抹の不安を抱えながらも喜びに満ちていた。
今までの時代では専業主婦といえば給与はなく、善意と思いやりで毎日同じルーティンを家族のために動いているにもかかわらず、家の外で働くほうが偉いという謎の暗黙の了解がなされていた。
どちらの仕事も重要であるにもかかわらず。
勉強や仕事でうまく日常生活を隠されてしまっているが、本来の生活は衣食住であること。
健康は大切でありがたいこと。
これらは専業主婦の努力のたまものであることを忘れてはならないだろう。
しかし、プライドの高い男たちはこの状況に順応できずに自殺するもの、廃人と化すもの、燃え尽き症候群になるものと様々おり、AIはなぜ男たちがこのような行いに出てしまうのか機械という欠点により理解に苦しんでいた。
AIたちは少しずつ困惑しながら世界を統治し続けた。
ただ、AIたちの叡智のおかげで他の社会情勢はうまく回っていた。
志穂は、家の中で卑屈になっている夫を気にかけながら今日も生活を続けていた。はじめは心の中でガッツポーズをとっていた時もあったが、夫の変貌を見て徐々にこれでいいのかと疑問に感じるようになっていった。
どんな時も一緒に苦楽を分かち合う約束を交わして結婚したはずが、どうしてこのようになってしまったのか。
時代やAIの前では志穂をはじめとする個人一人ひとりはあまりに無力だった。
そして、今日もテレビから男性の自殺者増加のニュースが流れていた。
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