0人が本棚に入れています
本棚に追加
とにかく、その時間まで待って該当者が現れなければ、タクシーを呼ぼう……またあの運転手の車になるかもしれない……
そんな事を考えていたら、車のスリップ音が聞こえて、次クラッシュ音。
音がした方へ行くと、先程のタクシーが少し先のカーブでガードレールにぶつかっている。
えっ?まさか?
私はゆっくりとタクシーに近づくと、案の定運転手は目を見開いたまま頭から大量に出血していた。
この人だったのか……
「もしもし、お客さん」
私は運転手に話し掛ける。
「うーん、おきゃく?」
どうやら、運転手は気が付いたようだ。
「お客って、僕のことですか?いや、というかあな……たは?先程僕の運転するタクシーに乗っていたお客さんでは?」
青白く光る運転手はまだ状況を理解していないようだ。
無理もない。
皆んな最初は同じような反応をする。
「いいえ、今は貴方が私のお客様ですよ。さあ、今度は私がお連れしますよ」
「ど…こへ?」
運転手はまだ戸惑っている様子。
私は彼の身体を指差した。
「実はこういう状況でして、本当に申し訳ないのですが、一緒に来ていただけますか?」
「こういう?うわー!!」
運転手もぬけの殻になってしまった自分の身体を見て叫んだ。
「ど、ど、どいうことだ?あ、あなたは一体誰なんだ?」
運転手の魂は不乱に叫ぶ。
でも、大丈夫だ。
心優しいこの人ならば、直ぐに自分の運命を受け入れて、また新しい人生を歩み出せる。
「私も貴方と同じような仕事をしていますよ。人を運ぶ仕事、ただ私が運ぶのは人の魂のみですが……」
最初のコメントを投稿しよう!