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"迎車"
と、表示された車内ランプを見ると頭痛がしてきた。
「お客さん、先週も乗せましたよね?その時はもう少し早い時間でしたが」
「22時」
私は一言だけ返事した。
「そう、そう確か夜の10時丁度でしたよ。その日も雨が降ってましたね。いやあ、我々は雨の日が一番忙しくて」
気さくに話しかけて来る運転手さんに対して適当に相槌をして、私は窓の外を見た。
真っ暗な空にバケツをひっくり返しような大雨……
こんな天気の中、大して重要でもない仕事に行かないといけないなんて。はあ……
溜め息を漏らしていると。運転手が心配そうに声を掛けて来た。
「お客さん、大丈夫ですか?これからお仕事なんですか?」
夜中の0時過ぎ、こんな時間に仕事する人は多くないのだろう。運転手は私の職業を何だと思っているのだろうか?
時間が定まっていない仕事。
「まあ」
私は短く答えると、また外に目を向けた。
運転手は私が会話をしたくないが為に窓の外を見ているのだと思ったのだろう。それ以降は話しかけることはなかった。
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