雨降る夜のお仕事

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 とにかく、時間まで待って該当者が現れなければ、タクシーを呼ぼう……またあの運転手の車になるかもしれない……  そんな事を考えていたら、車のスリップ音が聞こえて、次クラッシュ音。  音がした方へ行くと、先程のタクシーが少し先のカーブでガードレールにぶつかっている。  えっ?まさか?  私はゆっくりとタクシーに近づくと、案の定運転手は目を見開いたまま頭から大量に出血していた。  この人だったのか……  「もしもし、お客さん」  私は運転手に話し掛ける。  「うーん、おきゃく?」  どうやら、運転手は気が付いたようだ。  「お客って、僕のことですか?いや、というかあな……たは?先程僕の運転するタクシーに乗っていたお客さんでは?」  青白く光る運転手はまだ状況を理解していないようだ。  無理もない。  皆んな最初は同じような反応をする。  「いいえ、今は貴方が私のお客様ですよ。さあ、今度は私がお連れしますよ」  「ど…こへ?」  運転手はまだ戸惑っている様子。  私は彼の身体を指差した。  「実はこういう状況でして、本当に申し訳ないのですが、一緒に来ていただけますか?」  「こういう?うわー!!」  運転手もぬけの殻になってしまった自分の身体を見て叫んだ。  「ど、ど、どいうことだ?あ、あなたは一体誰なんだ?」  運転手の魂は不乱に叫ぶ。  でも、大丈夫だ。  心優しいこの人ならば、直ぐに自分の運命を受け入れて、また新しい人生を歩み出せる。  「私も貴方と同じような仕事をしていますよ。人を運ぶ仕事、ただ私が運ぶのは人の(たましい)のみですが……」  
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