来訪者

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 「はぁ……」 肉体と精神的な疲労を抱えて地下鉄の席に座る俺は深いため息をつく。 上司のミスの尻ぬぐい、理不尽なクレームの対応。 俺が何をしたと叫びたい程に面倒くさい事が続いた一日だった。 いつもなら、もう家で食事も風呂も済ませて、お気に入りの音楽をお気に入りのヘッドホンで聞いてリラックスしている時間だ。 まあ、終電にならなかっただけマシなのだが…… 鞄からイヤホンを取り出し、耳に装着する。 音漏れ防止がついているとはいえ、マナーは守らなきゃいけない。 あまり大きな音は控える。 程なくして流れ出すノリの良い音楽。 今は地下鉄の走る音が混じってしまっているが、家に帰れば密閉型のヘッドホンの為、周りの音を一切気にせずに楽しめる。 そう思うと尚更早く家に帰りたい。 たった数駅分だが、俺はそのまま黒しかない窓の外を眺めながら家で好きな音だけに包まれる時間に想いを馳せる。 明日は休みだ……今日は帰宅が遅れた分夜更しするとしよう。 そんな事を考えているうちに、俺を乗せた箱は目的の駅に到着する。
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