閉ざされた世界

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「ねえ優司くん。明日は休めるよね?」  玄関を出るところで、妻の菜々子が俺の背中に声をかけた。  休みの日ぐらい娘と遊んであげて、彼女が言いたいことぐらいすぐにわかる。面倒臭いという気持ちが腹の底に湧く。 「パパ。明日、一緒に公園に行こうよぉ」  娘の優菜がキンキンした声で言った。 「わかった」  俺は振り向くと優菜に手を振った。だけど頭の中は別のことを考えていた。  休みの日ぐらいゆっくりさせてくれよ、と。 「じゃあ、行ってくる」  朝からテンションが下がり、重い足どりで会社に向かった。  明日はせっかくの休みだと言うのに、公園で子守りかよ。  ふつふつと湧いてくる苦い思いに舌打ちをした。  三歳の優菜は公園が好きで菜々子とはしょっちゅう行っている。俺が仕事から帰ると、優菜は公園で遊んだことを報告してくる。そのあと決まって菜々子がママ友の話をする。 「はるなちゃんのパパは砂場でどろんこになって遊んでやってたわよ」「そらくんのパパは料理もするんだって。すごいよね。でも、それだけじゃないの。洗濯と掃除もするんだって」  どの話も当てつけにしか聞こえなかった。俺は子守りが嫌いだし、家事も苦手だ。男という生き物はみんなそうだと思っていた。
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