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ああ外に出たい。とにかく外に出たかった。
窓の外は秋晴れがつづいている。それなのにずいぶん家から出ていない。部屋に閉じこもっている。ずっとひとりで。
俺には妻と三歳になる娘がいた。もうしばらく会っていない。
部屋の隅には娘がいつも抱いていたクマのぬいぐるみが転がっている。ぬいぐるみは俺と一緒に持ち主の帰りをいまかいまかと埃を被って待っている。
外に出られるなら、ふたりを探すこともできるのに。
天変地異が起こったのは忘れもしない仕事が休みの日曜日だった。あのころは漫然と生きていた。
それが起こる前日、俺はふたりに約束したことがあった。
だけど俺はその約束を破った。そのことをいまは後悔している。
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