そうだ、迎えに行こう。

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 壮太が東京から帰ってくるというので、浅井家は朝から騒がしい。  父は、ゴルフの予定をキャンセル出来なかったらしく、夜も明けぬうちに、渋々車で出かけて行った。  母は、壮太の好物の手作りハンバーグを作ってあげようと、開店早々のスーパーに買い出しに行った。  壮太は両親に愛情たっぷりに育てられ、壮太と関わった人は、皆、壮太のことが好きになった。  優しくて、よく気遣いができて、若い時から懐が深くて、面倒見も良くて、悪口や陰口は決して言わないし、どんな人でも、元気づけて、褒めて、やる気にさせて、壮太自信もポジティブ思考でいつも前向きだし、壮太の周りはいつも明るかったけど、きっと、明るい人が集まって来たというより、壮太が、壮太と関わった人たちみんなを、明るくさせたんだろう。  私も、壮太のことが大好きだった。  東京の大学に通うというので、壮太が一人暮らしをすることになった。この家を出ていく時には、悲しくて、寂しくて、食欲も失せたっけ。あの時は、心配した母に、病院に連れて行ってもらったんだ。お薬を出してもらって、ようやく、体調は戻ったんだけど、心にぽっかりと開いた穴は、しばらく塞がれることはなかったな。  リビングにかかった時計は、十一時になろうとしていた。そろそろ、壮太が駅に着く頃だ。  私は、急に思い立って、駅まで迎えに行くことにした。  風通しを良くするために開けていた玄関から出て、門をおでこで押し開けた。  心は弾み、早く会いたくて、全力で駆けた。ステップは軽い。ウキウキした気分がそうさせているのだろう。  駅に着くと、ちょうど、壮太が改札から出てくるところだった。壮太は、すぐに私に気付き、目を丸くした。 「リコ、迎えに来てくれたんだ!」  私は、壮太に走り寄り、抱きついた。壮太は、私を受け止める。 「リコ! 久しぶりだなぁ。元気だったか? 会いたかったよ!」  私も会いたかった。  ずっと、会いたかったんだから……。 「にゃあ」  私は、私を抱きかかえた壮太に、おでこをワシワシと撫でてもらった。
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