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駐車場の男たちは、それぞれの情報網を駆使して、フィギュアを探しはじめたらしい。おそらくあの男がどこかに売ると、踏んでいるらしかった。
「お、早速見つけたみたいです」
差し出されたスマートフォンを見ると、あのフィギュアが、オークションに掛けられている。
ミチルのスマートフォンに次々とメッセージが届く。
『見つけました』
『通報しました』
『犯人、ざまぁ』
『俺たちを舐めんな』
「みんな……ありがとう」
ミチルは目頭が熱くなった。疑ってしまった自責の念と、仲間のやさしさがこみ上げてくる。
「よかったですね」
「ええ、本当に……」
恥ずかしさと温かさを感じたミチルの胸には、もうひとつ言いようのない思いが込み上げていた。
さっきまでの虚しさや怒りは頭の片隅にもなく、ただ目の前の男が輝いて見えていた。
「あの、よかったら、この後ご一緒しませんか?」
「いいんですか?」
「ええ、もちろん」
ミチルはシュークリームやコーヒーの入ったコンビニの袋を掲げ、微笑んだ。
嬉しついでに、気になっていたことを問い掛ける。
「あの、お名前は?」
男は照れ臭そうにスマートフォンを弄り始めた。
ミチルのスマートフォンのマッチングアプリに、通知が届く。
『拙者でござる』
『さようか。かたじけない』
二人は顔を見合わせると、照れ臭そうに笑い合い、コンビニの駐車場を後にした。
〈終〉
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