駐車場に姫がいる

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 しかしそんな中、ミチルの心を引く紳士的な男が現れた。 『おはよう、ミチルさん。今日は楽しみにしています。迎えに行きますね』  他の男たちとは違う、真面目でスマートな言葉。プロフィールの写真も二次元かと思うほど、男前。それでいて、アニメにも詳しい。 『もちろんです。私も楽しみにしています』  震える指で送信ボタンを押すと、机の上に飾られた限定のフィギュアを抱きしめた。  これのおかげで彼と話が弾み、近づくことができた。  今日は初めて彼に出会う。  着替えて家を出ようとすると、マッチングアプリにメッセージが届いた。 『姫、今日は天気の宜しい一日でござるな』 『さようで──』  メッセージを打ちかけて、スマートフォンをバッグに詰めた。  私は姫じゃない、ミチルさんだ。これから男の人とデートに出かける。  悪いが、構っている場合ではない。  ミチルはすっかり浮かれ気分で、部屋を後にした。
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