稽古

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稽古

 翌朝。ニイサンを見送りに出た帰り、トウヤンは廊下でばったりルットと会いました。彼女はサメヤラニと同じトウヤンの同期生で、会うのは実に2年ぶりでした。ルットも剣士協会の刀を腰に差し、同じ協会服を着ています。ご自慢の長い髪はてっぺんでひとまとめにしており、それは昔から変わらない……はずなのですが―― 「よう! 久しぶ……」  と言いかけたトウヤンを見るなり、彼女は怒ったニワトリのように全力疾走して胸倉をつかんできました。  パシリと頰をたたかれました。 「――なに」  もう一度たたかれました。 「サメヤラニの分」 「もうもらった!」  トウヤンは頰をさすり、かわいそうな声で自分をあわれみました。 「丸2年も音信不通! 死んだかと思った! 連絡無精にもほどがある」 「ごめん」  トウヤンは平謝りでなく、ちゃんと謝りました。 「心配したんだから」  やっとすっきりしたのか、ルットはトウヤンをギュッと抱き締めました。 「ニイサンから聞いた……面倒な強盗に襲われたって。体は大丈夫なの?」  「右手が使い物にならない」 「ちょっと!」ルットは息をのみました。「病院へは行ったの?」 「あぁ。でも、望み薄だ」  ルットは途端に威勢のよさをなくしました。 「気にするなよ」 「気にする」  むきになってルットはしかめ面になりました。 「俺、コウ領には戻らないで、器の指導者になることにした。ルットもサメヤラニと同じで器の指導者なんだってな。聞いてびっくりしたよ」 「あなたはいつも無茶をするんだから」 「心配してくれてありがとう。だけど、もう決めたことなんだ」  2人は一緒に歩き始めました。 「まさか、同期3人が指導者になるとはな。サメヤラニ、ルット――俺」トウヤンは笑いました。「いつも3人一緒だった。おかげでつらい鍛錬も乗り越えられたし」 「私としても、剣士1位のあなたが同期生だってだけで、鼻が高い。まぁ、それはさておき、あの3人も仲良くしてくれるといいんだけど」 「イザナたちのことか」  トウヤンは真面目な顔になりました。 「イザナにサン、レキ。3人は選ばれた子どもよ。これで、長年人類の悪夢だった氷河期を終わらせることができる。特にあなたが連れてきたイザナが鍵となるわ」  そのころ、イザナは広々とした部屋の片隅で目を覚ましました。臨時の部屋として与えられた客間なので、生活用品はなにも置かれていません。トウヤンが迎えに来てくれるのだろうとのんびり待っていると、なにやら騒がしい声がドアの向こうから聞こえてきました。 「確かこの辺なんですけど」 「さっきから同じ所を行ったり来たり」 「あった! たぶん、この部屋で間違いありませんよ」  ドアがコンコンとたたかれました。イザナはどきりとして立ち上がり、恐る恐る近づいていきました。耳を立てると、昨日会ったサンの声と、初めて聞く男の子の声がしました。 「イザナ? 私です。サンです。昨日会ったのを覚えてますか?」  イザナはヒマワリのような笑顔を思い出し、ドアを勢いよく開けました。 「あぁ、よかった! イザナの部屋でしたよ!」  喜ぶサンの隣には、くすんだ灰色の髪に、知的な目をした同い年くらいの男の子が立っていました。イザナはまた、昨日サンと会った時と同じく、懐かしい気持ちにさせられました。 「あなたにレキを紹介したかったんです。彼は私たちと同じ器、風の器です」  レキは瞬きもせずにイザナをじっと見つめると、小首をかしげました。彼は口元だけニコリといわせると手を差し出しました。 「俺の名前、長すぎて面倒なんだ。だからレキって呼んでくれ」  イザナが手を握り返した時、フワッと柔らかい風が通り抜けました。とても不思議な感覚です。 「本当だ」レキは笑いました。「初めてって感じしないな」 「でしょう?」  サンは腕を組んで言いました。 「ずっと前に、どこかで会ったことがあるような」  レキはチクタクと考え込みました。 「でも、思い出せない」 「そうなんですよね。こういう感覚のこと、なんて言うんでしたっけ?」 「既視感」 「そうそう! それです!」 「初めて俺がサンと会った時も同じだった。だろ?」 「そうですね」  唐突にレキは指をパチンと鳴らしました。 「俺たちは既視感の兄弟なんだ」 「はい?」  イザナも目が点になりました。 「俺たちは――兄弟。そう、兄弟なんだよ」 「無理がありますよ」 「お互い両親が分からないし、他に身内もいないんだ。ずっと探し求めていた兄弟なんだよ。これが一番しっくりくる! じゃなきゃ、こんな不思議な感覚を2回も体験するわけない」  初めて会った人にいきなり兄弟と言われるなんて、信じられない思いでした。同時にうれしくもありました。イザナは思い出していたのです。暗い地下室で、灯籠の明かりだけを頼りに、本の世界で見てきた家族やきょうだいのことを。姉と妹の姉妹、兄と弟の兄弟、きょうだいにはたくさんの種類があることを。物語に出てくるたくさんのきょうだいたちは、話し合い、知恵を絞り、自分たちの力を合わせて問題を解決していきます。それは、1人だけではできないことです。何度、思い焦がれたことでしょう。そんなものは、自分と縁遠いことで、本の中でだけ体験できれば十分だと思っていたのです。それが今―― 「俺たちは兄弟だ」  と言ってくれる人がいます。それは、本で見るより数倍美しく、全身で感じられる喜びでした。 「きょ、兄弟?」  一番びっくりしたのはサンでした。 「あぁ」  レキはケロッとして言いました。 「サンに言われた時は半信半疑だった。だけど、イザナを見て感じた。俺たちは見えないなにかでつながってる」  トウヤンとルットが廊下を歩いて部屋を訪れると、走り回る子どもたちに手を焼くサメヤラニの姿が見えました。 「こら! 枕は投げるものじゃない」  サメヤラニは疲れた声で言いました。しかし、彼の忠告もむなしくイザナとサンは枕投げに夢中でした。 「あの子は?」 「私が担当している風の器、レキ」  どこかうんざりした彼女の言葉からは、手を焼いているような気配が感じられました。少し意外だったのが、あのサンという男の子が思いのほかやんちゃそうだということです。雪道で初めて見た時は育ちがよさそうで、清楚な雰囲気をしていましたから、枕投げで遊ぶなんてことは考えられなかったわけです。  トウヤンはぐったりしたサメヤラニに手を振りました。ニコニコ笑うトウヤンと隣のルットを見つけたサメヤラニは肩をすくめました。一方、トウヤンを見たイザナは顔面に枕を食らってから駆け寄ってきました。 「もう仲良くなったのか」  トウヤンはよいしょとイザナを肩車しました。 「直談判はうまくいったのか」 「あぁ、いったよ」 「右手は使えないだろ」 「刀を握れるのは右手だけじゃない。なぁ、ほんとは俺とまた仕事ができてうれしいんだろ? サメヤラニ、強がらなくてもいいんだぞ!」  サメヤラニはつられて笑いました。 「イザナ。これからはサンとレキとともに行動しなさい。あなたもここで剣士としての鍛錬や、勉強をする。いい? 私やサメヤラニ、トウヤンは剣を教えたりする。お昼になったら呼びに戻るわ。トウヤン、私とサメヤラニとあなたで話があるの。来てもらえる?」 「分かった」  トウヤンは肩からイザナを下ろして2人と部屋を出て行きました。  さて、部屋にはまた子どもたちだけです。イザナがいつまでもトウヤンのいなくなった空間をぼーっと見ていると、急にサンが顔をのぞかせました。 「さっきの人、トウヤンって、サメヤラニとルットの仲良しなんですね。まるで昔から知っているような感じです」 「仲良しもなにも同級生だろ」レキは答えました。 「どうしてそんなこと知ってるんですか?」 「ルットが言ってた」 「なるほど、ふぅん。ルットはおしゃべり屋さんですからね。道理でサメヤラニは私になんにも教えてくれないはずです。あの人って本当に、真面目で! 口数が少ない! もう何年も一緒にいるのに、大事なことはなーんにも言わないんですから」 「なんでも協会で一番優秀な剣士なんだってさ。1位。ほら、成績板の一番上にあった名前思い出してみろよ。前に、トウヤンって誰だって、話したじゃないか」  カチコチと数秒たちました。 「……あぁ、あの人!」 「しっ! しーっ! そんな大声だすな。イザナがびっくりしてる」   確かにサンの声は大きく耳障りでした。イザナはキンキンしゃべるサンの隣で耳がブンブンいっていましたし、それを聞きなれているはずのレキでさえ、耳をふさいでいます。  サンはレキをにらみました。ヘビににらまれたカエルみたいになってレキはしぼみます。 「トウヤン」  イザナはつぶやきました。 「ここにきてからそれしか言ってない」  レキはそう言って分厚い辞書をパラパラめくりました。 「隣に来いよ」  イザナはレキの隣に座りました。 「あ行のページを開いてみよう。いろんな言葉が載っているだろ? 例えば……愛、会う、明日。試しにどれでもいいから言ってみな」  イザナはぎっちり文字が並ぶページを見て口を小さく開けました。なにか言うぞ、そうやって2人は期待して待っていたのですが、イザナは声が出ませんでした。口を開いても音が出てこないのです。 「好きな言葉を言う練習から始めてみるといいよ。君だって、トウヤンのことが大好きだから名前を呼んでいるんだろう?」  イザナはコクリとうなずきました。 「ほら! やっぱりちゃんと理解してる!」  レキは興奮して言いました。 「じゃあ、私のことを呼んでみてください!」 「俺のことは? ほら、レキって言ってみろ! レキ!」  2人は押し問答になりましたが、結局レキの方が折れました。 「サ、ン」  自分の名前をかみ砕いてサンはゆっくりと言いました。   しかし、口が開きはしても声は出ませんでした。 「時間がかかりそうですね」  サンは抑揚のない声で言いました。 「それじゃあ……」レキはまた辞書を開きました。「あった! この言葉を言ってみなよ、イザナ。と、も、だ、ち――友達。俺と君は、友達」   結局、イザナの言葉はトウヤン止まりでした。サンとレキはそれ以上の言葉を引き出そうとしましたが、どうにもうまくいかないのです。それはどこか、話したいけど遠慮しているような、力のなさを感じました。  そんな調子で迎えたお昼、サンとレキはトウヤンたちと会う前に、楼閣にある食堂へイザナを案内しました。そこは、層を丸々一つ占領するほど広く、いくつものテーブルに椅子がありました。台所からはおいしそうな匂いがプンプンします。剣士学校の生徒たちが作っている列の中に3人は並びました。 「普段はここでご飯を食べるんです」  サンは言いました。  列が進むたびに、いい匂いが3人を包み込みました。鼻をヒクヒクすれば、蒸したジャガイモに、焦げ目のついた肉、温かいスープの絵が頭に浮かびます。イザナは先に並ぶ2人のまねをしてお盆を取り、料理が並ぶ台の前まで来ました。そこにはてんこもりのジャガイモに肉、魚、根菜類に玉子のスープ、野菜の酢漬、4種の煮豆……色どり豊かな料理がずらっと横一列に並んでいました。  イザナは食べたい分だけ大皿に盛りつけました。席に着いて、さぁいただこうとした時でした。席に座ろうとしたサンに誰かがぶつかったのです。そのせいで、彼のスープが床にぶちまけられました。 「気を付けて歩きな」  見ると、同い年くらいの男の子がポケットに手を突っ込んで立っていました。生意気そうな目に、少し出た前歯、それにそばかすがありました。 「そっちがぶつかってきたんじゃないか」  レキが物怖じせずに言いました。ところが男の子の視線は、レキでもサンでもなく、イザナに注がれていたのです。 「そいつが新しい器?」 「イザナになんの用ですか? 私は今、とても機嫌が悪いんです。あなたを雷に打たせて髪をチリチリにしてあげたいくらい」  男の子は一瞬だけひるむとすぐに強気な目に戻りました。 「そんなことをしたらお前は牢屋に入れられるぞ!」 「正当防衛です。あなたの頭よりスープを台無しにされた方が高くつきますから」   2人はカッと火を噴く勢いで言い合いました。その時、彼の目の奥がチカチカと光った気がしました。よく見ないと分からない、本当にささいな変化なのですが、雷が瞬いたように見えました。サンの手からはパチパチ静電気のような音がはじけていました。 「雷男!」ひどく興奮した様子で男の子は言いました。「風男の次は火男ときたか。お前どもは人間じゃない。俺たちに災いをもたらす化け物だ。とっとと協会から出て行けばいい」  サンは押し黙りましたが、それは言葉で負けた気になったからではありません。あまりに心ない言葉だったので、怒りよりも悲しみの方が大きくなったためです。勝ち誇ったように顎をしゃくる男の子の顔が、なおさらカチンときたのか、いよいよレキも黙ってはいませんでした。 「謝れ」  そんな気はさらさらないのか、男の子は鼻で笑いました。 「レキ。なにを言っても無駄です。彼には響かないんですから」  そう言ってサンは男の子の前にずんと寄りました。 「そこ、どいてくれます?」  男の子は勝ち誇った顔でどきました。そんな彼を見て一言―― 「本当にかわいそうな人ですね」とサンは言いました。 「かわいそうなのはどっちかな? あぁ、親のいないお前たちには酷な話だったか!」  わざと聞こえるように大声で言うと、男の子の肩を誰かの手が引きました。イザナにとっては初めて見る顔でしたが、サンとレキは厄介者を見る目で見返しました。ヘビのような目に、キュッと結ばれた神経質そうな小さい口、芸術家風のやや奇抜な髪型をした若い男でした。 「サヒロ、なにをしている」  男の子は笑みを消しました。 「関わるなと言ったはずだ。そんなに仲良しごっこがしたいか」 「いいえ」  サヒロは急に勢いをなくしました。鋭い視線がサンに移り、男は彼の手をがっしりつかみました。そしてゆっくり、ねっとり、ヘビが獲物を捉えるようにサンの耳元に近寄りました。 「よく覚えておけ。私の弟子になにかしたらただでは済まさんからな」  強く握る男の手を、別の大きな手が握りました。 「なにしてる」  トウヤンは左手でつかんだ手をパッとはじき返し、怖気づいたサンの前に立ちました。嫌な虫でも目にしたように、男は目を細めました。 「私の気のせいでなければ、君は私の大嫌いなトウヤンではないか。ふん、昼間から口にもしたくない言葉を言うはめになった」 「相変わらず嫌味っぽいな、あんたは」トウヤンは眉をひそめました。「ショウセイ」 「行くぞ、サヒロ。長話は不要だ」  そう言ってショウセイと呼ばれた男とサヒロは立ち去りました。  食堂を出た後もサンは無口のまま、誰とも目を合わせようとしませんでした。3人はトウヤンに連れられて協会の中を歩き、広々とした道場にやってきました。 「なにを言われたのかは知らないが、どうせろくでもないことだろうよ」  トウヤンはうつむいて歩いていたサンに言いました。腰を折って彼の目線に合わせると、首をかしげながら「気にするな」と言いました。  とはいえ、サンはまだ自信なく肩を落としていました。 「サヒロが言ったんだ」レキが小さく言いました。「僕らは人間じゃないって」  トウヤンは小さくため息を漏らしました。 「俺はそう思わない」  サンは顔を上げ、自分の小さな手を見つめました。 「でも……人と違います」 「特別なんだ」  トウヤンは愛と勇気に満ちた声で言いました。 「だって、すごいことじゃないか。俺やサメヤラニ、ルットにはできないことができる。サン、レキ、イザナも。そういうのを天分だとか、持って生まれた才能って言うんだ。ひがみやら妬みを向けてくるやつは必ずいる。でも、そう思われるってことは、それだけすごいもん持ってるって証拠だろ? 人は言葉で簡単に駄目になる生き物だ。でも、言葉で救われることもあるんだ。なぁ……知ってるか?」  サンとレキはトウヤンの瞳に吸い込まれていました。 「それができるのは人間だけなんだ」  そこでニッと笑い、トウヤンはサメヤラニとルットが待つ場所に戻って行きました。サンは薄っすらと浮かぶ涙を拭いて笑顔を取り戻しました。 「私たちも行きましょう、レキ。イザナ」  午後から始まったのは刀の稽古でした。イザナにとっては初めてのことでしたが、幸い周りは皆刀の扱いに慣れた剣士ばかりです。教えてもらう相手には苦労しませんでした。 「さぁ、イザナ。まずは刀を抜いてみな」  トウヤンの合図でイザナは刀を抜きました。この不思議な刀は、初めて引き抜いた日の夜と同じように、刃の芯からにぶく輝く赤色の光がこぼれていました。ですが、もちろん刀なんてろくに握ったこともありませんから、ちっとも様になりません。 「刀を抜くときは、こうするんだ」  トウヤンは左手の親指でつばを押し出し、鞘から刀を抜いて見せました。 「この短時間で鍛錬したのか?」  しげしげと見つめながらサメヤラニが口を挟みました。 「俺を誰だと思ってる」 「さすがだな」  サメヤラニは素直に言いました。  イザナは小さな親指を突き出して刀のつば部分を押し出しました。当然トウヤンには及びませんが、2センチくらい鞘から刀が飛び出ました。 「そうだ、うまいぞ!」  トウヤンは褒めちぎりました。 「のみこみが早い」とサメヤラニ。 「当たり前だ。俺の弟子なんだから」   トウヤンはいちいち胸を張りました。 「それじゃあ、今のを慣れるまで何回か練習してみよう」  そんな調子でイザナは抜刀の練習だけを何度も何度も繰り返しました。 「じゃあ、私たちも始めましょう」  サンはチャッと抜刀して刀を抜き取りました。彼の刃はイザナと違い、黄金色に輝いていました。一方、レキの刀は白っぽく柔らかな光をしています。サンはサメヤラニと、レキはルットと打ち合いを始めました。体格の違う者同士でしたが、レキもサンも身に付いた美しい動作で受けと攻めを繰り返していました。 「ちっとも改善されていないぞ、もっと相手の懐に入り込め」  サメヤラニは刀を振りながらサンに忠告しました。  カン、カン、と刃がぶつかり合う音が道場に響きます。イザナはトウヤンが見守るなか抜刀の練習を続けました。2時間ほどたったところで打ち合いをやめたサンたちが壁際で休憩を取り始めました。ぶっ続けで2時間も打ち合いをしたものですから、特にサンとレキは噴き出す汗を拭うのに大忙しでした。 「ずっと抜刀の練習を?」  サンの言葉でイザナはやっと親指を止めました。何回もつばに押し当てたせいか先の方が赤く腫れていました。 「よく飽きもせずおんなじ練習をやってられる」とレキ。 「すごい集中力」ルットが言いました。  ルットたちの言う通り、イザナにとって同じことを永遠に繰り返すのは苦でありませんでした。むしろ心地がいいくらいで、彼にとっては2時間も4時間も大して変わらなかったのです。後半はいったん刀を置いて、体の柔軟体操や筋肉をつくるための運動がメインでした。レキとサンは体格が同じくらいなので、いつもペアを組んでいましたが、今回はイザナが加わったので順番に体を押さえる役目だとか、逆に体を動かす役目をしました。  誰かと何かを一緒にやる、ということがイザナには楽しくてたまりませんでした。なによりあの狭い地下室の外に、こんなにキラキラした子どもたちがいたなんて、まだどこか夢心地だったからです。  しかし、サンとレキにとって無表情のイザナはなにを考えているのか分からない存在でした。相変わらず一言もしゃべりませんし、にこりともしないからです。これでは当然、イザナが内心どんなことを思っていても、うまく伝わるはずがありません。  道場での稽古は想像以上にどっと疲れる内容でした。いくら精神的に大丈夫でも、体は正直です。親指は腫れるし、体はビリビリ痛いし、こんな感覚は初めてでした。 「そういやイザナ、自分の部屋はもらったんだろ?」  レキが鍵を宙に投げながら尋ねました。 「なんか今、下級剣士の部屋に空きがないらしいですよ」 「なら俺んとこ来いよ!」 「あっ、私の部屋半分使います?」  イザナが迷っているとレキが肩をすくめました。 「こいつんとこは駄目だ。足の踏み場もない」  言葉の意味が分かったのはサンの部屋をのぞいた時でした。 「ちょっと散らかってますけど……」 「少しって意味を辞書引いてみろ」  レキは本や服で埋もれた部屋を見て言いました。  そんなわけで、イザナはレキの部屋に引っ越しました。自由に歩ける床があるのは素晴らしいことでした。  イザナはいそいそと布団を部屋の角に敷き始めました。 「イザナ、君はいつもそんな隅っこで寝てるの? 隙間風が入って寒い。あぁ、でも君は寒くないんだったね」  イザナは布団の中に入って毛布をかぶりました。しばらく2人とも黙っていると、レキは部屋が妙に暖かいことに気付きました。さっきまで冷え冷えとしていた鼻先が妙に温かく感じられたのです。 「まさか君が暖めた?」  レキは体を起こして尋ねました。イザナはゴロリと寝転がって遠くからレキの顔をぼんやりと見つめました。間違いありません。イザナが部屋に来た時から寒さが少し和らいだのです。 「すごいな、君は」レキは言いました。「俺は風を生み出せるけど、あんまり使わないんだ。だって人は風が苦手だろ? こんなに寒いのに風なんて吹かしたら迷惑だろうしさ」  イザナはじっと耳を澄ましていました。 「そうだ。すごいもの見せてやる。ついてきな」  レキは厚手の外套を羽織り、灯籠を持ってイザナと部屋を出ました。夜の楼閣はしーんと静まり返っていました。2人は小さな歩幅でらせん階段を上って行きました。ただでさえ縦に長い楼閣ですから、階段の数は数えきれないほどです。これだけでも稽古と同じくらいの運動にはなりそうでした。 「ついた」  階段にはまだ続きがありましたが、レキは途中にある扉を開けて外に出ました。目の前には木の壁の向こうに巨大な氷の壁が見えました。ここから見える氷の壁はまた違って見えます。でかいことに変わりはないのですが、とにかく左右どこまでも長く続いていたのです。 「あの壁の真上に俺らが立っていると考えれば分かりやすい。ずっと左に進んでいくと、いずれ元いた場所まで戻ってくる。つなぎ目がないんだ、この壁。北の領地をぐるりと囲うようにそびえ立ってる。向こう側に渡るとき、大きな橋を渡っただろう? あの下にあった谷底も、同じように左右に続いていて、やがて海に出る。ずっと昔、3領地との間で地割れが起こって、あんなふうに裂けたんだってさ」  イザナは彼と同じ方向を見つめていました。 「信じられないよな」レキは笑いました。「千年も――誰も壊せなかった壁を、君の力で壊せるだなんて」  レキはどこか恐れているようでした。 「楼閣の高さは100メートル。壁の高さは300メートル。ぜんぜん足りないよ。壁の向こうにはなにが広がっているんだろう。マフ領やサキ領、コウ領と同じように町や村があるのかな。同じように、俺らみたいな子どもたちがいるのかな。時々ここに来て、そんなことを考えるんだ」  2人は部屋に戻り、暖かい部屋の中で眠りにつきました。でも、イザナは急に恐ろしい思いにとらわれてすんなりと眠ることができずにいました。これまであった幸せな出来事もかすむほど、胸をきつく締め付ける記憶でした。イザナはどんなに自由になろうとも、あの暗く狭い、わびしい地下室から抜け出せずにいたのです。鞭でたたかれた痛みが今も生々しく思い出され、同時にあの冷酷な男の顔が浮かびました。「黙れ」と男は言いつけて怒っています。「お前はなにもしゃべらなくていい。口答えしたらこうだ!」――  イザナは両手を強く抱き締めてうずくまりました。  現実なのか夢かも分からない境界線で、イザナはびっしょり汗をかいて目を覚ましました。ベッドにはさっきまで寝ていたレキの姿が見えません。イザナは部屋を飛び出して階段を駆け上がりました。もしかしたら、彼はまたあの場所にいるのかもしれません。ところが、あの場所に言っても誰もいませんでした。  氷の壁が見えました。外では風がゴーゴーうなって雪が横殴りに降っています。2人でいたときはちっとも怖いと感じなかったのに、今はさみしさで戻ろうとした足も言うことをききませんでした。氷の壁の向こうから、一際強い冷たい風がイザナをのみこみました。体中に雪がまとわりつき、髪の毛を先から凍らせようとします。  声が聞こえました。まるで耳元でささやかれているように鮮明に。イザナは恐怖でガチガチ震えその声を聞いていました。 ”……殺し……”  声はどんどん強くなっていきます。 ”てやる……”  イザナは後ろを振り返りました。  白い奇妙なお面を着けた男が立っていました。 ”殺してやる!”  イザナは布団から飛び起きました。どういうことでしょう? レキの部屋でした。イザナは怖くなってベッドを見ました。レキがすやすや寝息をたてて寝ていました。 「ひどい汗じゃないか」  もう一度目を覚ますと、レキが心配そうにのぞきこんでいました。イザナはバッとレキに抱き着いたままブルブル震えて離れませんでした。 「怖い夢でも見たんだよ。でも、ほら――外はこんなにいい天気だ。嫌なことは忘れるに限る」  やっぱりあれは悪い夢だったんだ。イザナはそう思い込むようにして、あの生々しい出来事を振り返らないようにしました。ところが、今さっきレキがいい天気と言ったばかりの外で、急激にみぞれが降り出す音がしました。 「すぐにやむ」  レキは言いましたが、どうも収まる気配はなく、音は一層ひどくなるばかりです。ポツポツという音からカンカンという音に変わり、やがてドンドン! と隕石でも降ってきたような音に変わりました。 「なんだ?」  窓を開けると、大きな氷の塊が降り注いでいました。  イザナとレキはすぐさま外の様子を見に出ました。町中に氷の塊が落ちていて、直径20センチ程もありました。 「もうやんだみたいだ。あっ! けが人がいる!」  レキは氷塊が降ってこないかヒヤヒヤしながら大通りに出ました。大変です。道の脇で頭を抱えて動けないでいる人が数十人はいました。協会の中から、カンザがウイを率いて現れました。カンザは頭上の怪しい雲を見上げました。 「ウイ、剣士に通達してください。壁の様子を見てくるようにと」 「壁?」  ウイは間の抜けた声を出しました。 「気付かれたようです。あの男にとって、一番厄介なものは火の器。その存在が知られたのであれば、心してかからねばなりません。あの者は生かしてはおかないでしょう……イザナを」  イザナは2人の会話を聞いて怖くなりました。 「しかし、どうして火の器だけ? 雷と風はとっくに石をのんでいたではありませんか」 「恐れているのです。その火が自分の氷を解かしてしまうのではないかと」  そう言うカンザの声は恐怖に沈んでいました。 「恐れる? 世界を氷河期に変えた……あの男が……なにを恐れるというのです。いつだって、恐れを知るのは私たちです、カンザ様」 「もう彼は人間ではありません」カンザははっきりと言いました。「化け物です」  それを聞いたレキとイザナは顔を見合わせて肩をすくめました。ここにサンがいたら、きっとまたひどく落ち込むだろうと思ったからです。 「器には光と影の部分が存在します。一度影にとりつかれた者は、石の力に全てをのみ込まれ、年を取ることもなく、死ねない体となる……水の器、いえ、氷の器となった彼は、完全に己を忘れているはずです。今の彼にとって、イザナは自分が築き上げた氷の国を壊しかねない存在。だからこそ、警戒し、恐れているのです。かつて、大勢の人間を殺した史上最悪の汚名……」  ウイはごくりと唾をのみ込みました。 「センドウキョウ」 「恐ろしい」ウイはぶるると震えました。 「このひょうも、彼の力によるものでしょう。ウイ、早急にお願いします」  ウイはそそくさといなくなりました。 「センドウキョウ? それが世界を氷河期に変えた水の器?」  レキは言いました。 「その通りです」  いつの間にか後ろにサンがいました。 「どうして知ってる」 「石碑に書いてあります。ほら、私たちが刀を受け取った、あの地下室にあったじゃないですか」 「あんな古い言葉」  レキは舌をべーっと出しました。 「ウイに教えてもらったんです。随分と前に」 「もっと前に教えてくれよ」  レキはむっとしました。 「正直、信じていませんでした」急にサンは塩らしくなりました。「千年も生きられる人なんていませんから」 「きっと重要なことなんだ。今、カンザ様とウイが話してただろ? このひょうも、きっとやつのせいなんだって。そういえば、氷の壁を見てくるとか言ってた」レキは言いながら身震いしました。「生かしてはおかないだろう、とも。イザナを……」  イザナは昨晩あったことを思い出していました。あれはきっと夢だったのでしょうが、突然目の前に現れた白いお面をかぶった男。途切れ途切れではありましたが、確かに聞こえたのです。「殺してやる」と。 「どうしてイザナなんです?」  サンは険しく聞きました。 「俺にも分からない。だけど、カンザ様が言うには、センドウキョウの一番厄介なものが火なんだって。だから、火の器であるイザナを恐れている」 「随分となめられたものですね。雷と風では足元にも及ばないってわけですか」 「火は氷を解かす。簡単な話だ」 「……大丈夫ですか? 顔色が……」  サンがイザナのおでこに手を当てました。 「悪い夢を見たのかもしれない。汗びっしょりで起きたから」  3人は自主的に道場に戻りましたが、いくら待ってもトウヤンたちは戻りませんでした。協会の外は相変わらずさわがしく、大勢の剣士たちがかりだされています。 「こういう時は、道場で待機と言われています。サメヤラニたちが戻ってくるまで私たちでやりましょう」  サンは胸を張って言いました。3人で話し合った結果、木刀での素振りをしようということになりました。とはいえ、イザナは一言もしゃべらず、レキはこだわりがありません。実質的に、サンの意見で決まりでした。  そのころ、氷の壁ではわらわらと剣士たちがたいまつを持って集まっているところでした。 「異常があった場合は私に知らせるようにしてください」  ウイの命令に、若い剣士たちは馬を走らせて左右へちって行きました。さっきまで顔をのぞかせていた太陽も、今は分厚い灰色の雲に覆われています。そこへ、トウヤン、サメヤラニ、ルットの3人が到着しました。 「やっと来てくれましたか。今、協会では上級剣士の数が足りていませんから、あなた方3人がいてくれると大変助かります」 「おやおや、数え間違えではありませんかな?」  ウイの陰から陰気な男が顔をのぞかせました。 「右手が死んだも同然の剣士を、上級剣士と呼ぶようでは、わが協会の名に傷が付きますぞ。さて、そういうわけでトウヤン、君も馬を走らせて壁の様子を見てきたまえ。異論はないな」 「これはこれは、誰かと思えば俺の大嫌いなショウセイ」トウヤンはわざとっぽく言い返しました。「みくびってもらっちゃ困るねぇ。なんなら一層、ここで打ち合いとでもいこうか?」  ショウセイは鼻で笑いました。 「その左手で、私を串刺しにできるとでも思っているのか。愚か、実に愚か。まぁ、死んだ右手が復活したとしても、今のお前では私に勝てるまい」 「なんだと」 「やめないか!」  サメヤラニは軽蔑のまなざしを2人に向けました。 「優等生ぶるのは昔から変わらないな、サメヤラニ」 「なんとでも言えばいいさ」  ウイは深いため息をもらしました。「いつまでたってもけんかとは」  バチバチ火花がちる間にルットが割り込みました。そうしてトウヤン、ショウセイの手をつかむと、グッと引き寄せて握手させたのです。 「ウイの言う通り。ニイサンの弟子なら、賢く立ち回らないと。こんなところでいがみあいのけんかなんて、してる場合じゃないでしょう?」  ショウセイは嫌そうな顔ですぐに手を離し、神経質に外套で手を拭いました。 「そんで? 俺たちはなにすればいい」  トウヤンはショウセイを完全無視してウイに尋ねました。 「これを持って」ウイは大きなおのを渡しました。「氷を削ってください」 「削っても、すぐ再生するんだろ?」  じろじろ壁を見ながらトウヤンが疑問をぶつけました。 「削った氷を持ち帰って詳しく調べるのです」 「ふぅん? なるほどねぇ」  トウヤンはおのを左手に握り、氷の壁に向かって振り落としました。  協会に人が戻ってくる気配がして、イザナは窓をのぞきました。なにやら氷の破片をそりに積んで引く剣士たちの姿が見えます。彼らはぞろぞろ歩いて協会の中に入っていきました。 「ルットたちが戻ってきたのかもしれない!」  レキが木刀をぶん投げて言いました。 「行ってみましょう」  3人は道場を出て、らせん階段から吹き抜けになった下をのぞき込みました。思った通り、トウヤンたちの姿が見えました。 「おーい! ルッ……」 「ちょっと!」サンが遮りました。レキは耳をふさぎます。「見てください! 氷を運んでます」 「そりでどこに運ぶつもりだ?」  レキは階段から身を乗り出しました。階段の下では、そりに氷を載せて運ぶ剣士たちの姿が見えました。どうも彼らは地下へ向かっているようです。 「あの氷、まさか壁から取ってきたのか?」 「あっ! ルットが気付きました! おーい、おーい!」  こういう時によく通る声とはいいものです。  3人は階段を全速力で駆け下り、そりご一行を見守るトウヤンたちと合流しました。 「一言も言わないでいなくなってしまうなんて、ひどいです」 「急用だった」  サメヤラニは答えました。 「氷の壁に行っていたんですか?」 「あぁ。氷の壁に変化がないか調べるための緊急招集だ。今朝のひょうに関連して異常があれば対策をとらなければならない」 「氷を調べるって言ってたけど、なにをどう調べるつもりなんだか」  トウヤンは腕を組んで立つサメヤラニに言いました。 「お疲れさまでした」  外からウイが戻ってきました。 「さて、さっそくですが、私についてきてください」  とくに説明もないまま、イザナたちはウイを先頭に地下へ続く薄暗い階段を下りて行きました。訪れた部屋の中を見て、イザナたちは言葉をなくすほど驚きました。今運んだ分以上に、たくさんの氷塊がうず高く積まれていたのです。 「これらは全て、あの氷の壁から採取したものです。採取した日付の札を、それぞれ張っています」 「……これ、1年前の氷ですよ」  サンはそばにあった氷塊を見て言いました。 「あなた方が見るのは初めてでしたね。ここは壁から採取した氷を保管し、調査するための地下倉庫。協会では、氷を研究する研究員がいまして、ここで日々研究しているのです。それで、氷の壁について分かったことがあります。壁自体は削られた部分を再生しますが、削り取った氷は再生しないということ。さらに、どんなに高温の火で熱しても液化しないということ。それだけでも十分おかしいことなのですが、この通り、例えば野菜を氷のそばに置いたとしましょう――」  ウイは持ってきたダイコンを1本氷塊の上に置きました。みんなが見守る中、次第にダイコンはしわしわになり、ひからびて小さくなっていきました。わずか数分の間に、です。トウヤンたちは息をのみました。 「人の場合はどうなる?」  真っ先にそう聞いたのはトウヤンでした。 「……人で試したことはありません。ですが、食用の鶏で試したところ……死にました」  この場にいる誰もが押し黙りました。 「まるで、近くにいる者の生気を吸い取ってしまうようなのです。だから、ここに長時間いるのも、私はおすすめしません。もう何人の研究員たちが辞めていったことか、数えきれませんよ。気が変になるからです。しかし、なぜこうも研究を続けているかというと、全てはあの氷の壁を壊すため。正確に言えば、解かす方法を探り出すということですが。こんな話をしておいて、こう言うのもなんですが、今すぐにでも、私たちはイザナの力を借り、氷を解かしたいのです。ここにある氷を解かすことができれば、きっと氷の壁も解かすことができるはずです。氷の石を破壊するためには、小さな一歩かもしれませんが、全人類としては大きな一歩になるでしょう」  ウイは縮こまっているイザナの前に立ちました。 「火の器であるイザナ、君の力でなんとかこの氷を解かしてほしい」  イザナは自信のない顔でうつむきました。 「じいさん。悪いがこの子はまだ刀も始めたばかりなんだ」  そうたしなめるトウヤンのそばで、イザナは親指をつばにおしつけ刀を抜きました。赤色の光が薄暗い部屋の中をわずかに染めました。イザナは刀を氷塊めがけて突き刺しました。金属がはじける鈍い音がこだましました。氷塊は切っ先で少し削れただけで、ちっとも解ける気配がありません。  ウイは少しだけ削れた表面をしげしげと見つめました。 「なるほど。物理的に少し欠けただけですか」 「今はまだ早すぎるんだ」  トウヤンは言いました。 「そこ、どいてください」  サンは黄金色に輝く刀を抜いて、イザナの前に立ちました。 「なにする」  サメヤラニがいぶかしげに尋ねました。  見れば分かりますよね? と言いたげにサメヤラニを見返すと、サンは刀をグッと引いて思いきり突き出しました。ビリビリ空気を電気で揺らしながら、彼の刀は氷をガリッと砕きました。しかし、電気が発生したこと以外はイザナの時と大差ありませんでした。  みんなが部屋を出て行こうと流れだした時、イザナはさっき削り落ちた氷の破片をこっそりポケットに入れました。氷を持ち帰ってから、誰もいない時に取り出して、氷を解かす練習を始めたのです。力ずくでやっても砕けるだけなので、どうしたら解けるのかを考えました。
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