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薄く開かれた扉。
その隙間から、見慣れた顔がハッキリと僕を眺めているのが見えた。静かに扉を開けると、其処には過呼吸の状態で立っている麗二が居た。部屋にいたと思っていたのに、どうしてこんな所にーー……
「麗二」
シーツで身を隠し、ベッドの方へ後退りしながら名前を呼ぶ。しかし、彼も自分の発情に当てられているのか、声が届いていない。ヒュー…と苦しそうに口を覆う手からは荒々しい呼吸音が聞こえてくる。野獣の様な視線にドッと興奮とは違う別の冷や汗が流れてくる。
「麗二、ダメだ。来ちゃダメ」
「……」
部屋の鍵を閉めた途端、ゆっくりと僕の方へ歩み寄ってくる彼。このままでは白雪さんに気付かれなくなってしまう。何とか「ダメ」を連呼してみるが、彼は顔を赤くしたまま、どんどん近づいて来る。
(ラット状態に入っている………今、どれだけ麗二の事を呼んでも耳には…)
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