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「……麗二は、久遠家の大事な跡取り。使用人の僕なんかを番にするべきじゃないんだよ」
「誰がそんな事を決めた」
「誰がって…、…拾ってきたΩと大事な息子が番になって、秋人様が喜ぶ筈が無い…」
その瞬間、自分の手首を掴む手の力が一気に抜けていくのを感じた。慌てて振り返ると、麗二は絶句した様子で僕を見据えていた。
「それはつまり……琥珀は父さんが好きだというのか」
「どうしてそうなるの!……そうじゃなくて、君に僕は相応しく無いと言っている」
途中の方から小声になってしまった。気まずくて顔を俯いている間、麗二は何も喋ろうとしない。沈黙に耐えきれず「麗二…」と恐る恐る顔を上げると、彼は能面の様な表情で「そうか」と冷たく言い放った。今迄見た事の無い、彼の冷たい視線に、ゾクッと背筋が凍るのを覚える。
「そんなに父さんの事が気になるなら、俺は当主という立場を捨ててでも君を抱く」
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