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どうしてそんな事をハッキリと告げれるんだろう。どうして麗二はそんなあり得ない言葉を言ってくれるんだろう。内心泣きそうになりながらも「どうして…」と小さく問うてみる。服の袖を引っ張り、必死に力を振り絞って聞く。
「僕がΩだから抱きたいんですか?」
「違う」
前みたいに、間は無かった。
キッパリ言い切った彼はスッと僕に手を伸ばすと、ふわっ…と羽根が触れるみたいに優しく抱き締めてきた。突然の抱擁に頭が追いつかない自分は「ぇ」と腕の中で小さく声を漏らした。
「………何処にも、行かないで欲しい。ずっと側にいて欲しい」
「麗二」
「突き放したりしたけど。カッコ悪い所ばかり見せている自分だけど……隣に居て欲しい。昔みたいに……いや。番として、俺の隣に」
気の所為だろうか。
さっきからあり得ないくらい嬉しい言葉をどんどん言ってくれる。呆けている僕から一旦離れた彼は気まずそうに顔を逸らし、もう一度恐る恐る僕の方を見据えた。躊躇う様な、でも何かを決心した様な面持ちで「俺は」と震える声で続ける。
「俺は、ずっと琥珀が好きだった。あの日、初めて出会った時からずっと」
「ーーー……」
「琥珀は……こんな、カッコ悪い俺は嫌いか…?」
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