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episode 5
「失礼します」
コンコン、と軽くノックして告げる。扉の向こうからは「どうぞ」と入る様に促す声が聞こえてくる。ガチャリと開けると、視線の先でソファに腰掛ける白雪さんが居た。僕を見るなり、にこやかな笑みを浮かべる。
「待っていました、琥珀様。身体の方はもう大丈夫ですか」
「はい。二週間ものの休みを頂き、有難う御座います。お陰様で今日からしっかり働けそうです」
胸を軽く叩き、そう主張すると、彼は満足気に頷き「それは良かったです」と言う。しかし、次の瞬間顔を引き締めると何か探る様な視線を向けながら「さて」と近くのテーブルの上にある紅茶の入ったカップに手を伸ばしながら告げる。
「今日は別件で此処に来られたのですよね」
「……はい」
ゴクリと生唾を飲みながら「失礼します」と目の前に座る。真剣な面持ちを浮かべる彼を正面から真っ直ぐに見据えた僕は、そのままテーブルに額が付く勢いで頭を下げた。
「僕から個人的なお願いが有ります。これは僕の我儘に過ぎないですが」
「……」
「お願いします。引き続き麗二のお世話係として彼の側にいる事を許して下さい。麗二がしっかりしたαになる様に、これからもサポートさせて下さい。そして、何処に出しても恥ずかしくない立派なαになったその時は………」
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