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『麗二はこの久遠財閥家の当主にもなり得る大切な人材だなんだ。何処に出しても恥ずかしくないαになる様、しっかり教養してくれ』
『……精進します、秋人様』
にっこりと笑顔を貼り付けたまま、内心麗二と呼ばれた少年の事を哀れに思う。中学生になるとはいえ、まだまだ子供だ。それなのに優秀なαであるが為に父親の抱えている重荷を引き継ぐ事になろうとは。
軽く荒んだ気持ちになりながらも、麗二の前に立ち、『宜しくお願いしますね』と手を差し伸べる。彼は不服そうな顔をしながらも『宜しくお願いします…』と手を握り返してきた。これが、私と麗二様の出会いとなった。
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『麗二様、起床のお時間です』
コンコン、と軽くノックをしながら入って、足を止める。其処には、ソファにちょこんと座り、此方を黙って見据える彼が居た。ベッドの上に着ていた寝巻きを畳んで置いてあり、自身は顔を洗い終えたのか、既に身支度の準備すら整っている。
『ーー…失礼しました。もう起きられていたのですね。早速朝食の準備をします』
『………ん』
素っ気ないが、彼はそう小さく返答した。
態度は置いといて、彼は私の援助なんて必要無いと言ってもいいくらい優秀だった。早起きだけに留まらず、勉学、運動など、学校で習う事は何でもそつなくこなしていた。麗二様の通っている中学は結構な難関校と聞いたのだが、まさかここまでとは。
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