episode 5

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『…白雪。此処は連立方程式を使うのか』 『あぁ、其処はですねーー……』 時間が経つにつれて、家で休日勉強をする際はこうして質問をされる事も徐々に増えていった。物分かりが良い彼は、教えたらスッと解いてみせる。カリカリと丁寧に綴られていく式を眺めながら『麗二様は大変優秀ですね』と手を叩く。 『秋人様も誇りに思っている事でしょう』 『別に。…このくらい普通』 プイッと顔を背けると、彼はいじけた様子のまま数式を解いていく。その様子を眺めていると、心の距離は縮まっていないのだと何度も自覚させられる。お世話を始めて二ヶ月程経つが、生活面で話す事は増えたものの未だ心を開いて貰ってはいない。そう…文字通り、彼は全く笑わないのだ。
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