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(どうしたら、あの能面を崩す事が出来るんだろうか……)
お昼休み、思い悩みながら悶々と何気無く屋敷内の庭園に足を踏み入れた。
すると、其処は綺麗に手入れされた花々達が咲き誇っていた。思った以上に綺麗で、思わず、ほぅ…と感嘆の溜息を零す。屋敷内にこんな心癒される空間があったとは。
(だけど、奥の方はまだ何も植えられていない)
花を横目で見て、そのまま奥の方に進んでみる。
すると、何も手入れされていない花壇の前に座り込む一人の少年が見え、反射的に足を止めた。普段、学校に行く時以外に部屋から出る事の無い彼が、こうして庭園に出向いているとは意外だった。
(でも、どうして雑草の生えた何も手入れされていない花壇の方へ……?)
思わずジッと見つめていたら、視線に気付いたらしい。私の存在を認識した彼はハッと顔色を変えると『どうして此処に白雪が』と立ち上がり、一歩後退る。笑みを浮かべながら彼に近付き、『何をご覧になられていたのですか』とダメ元で聞いてみる。
『………ぺんぺん草』
『ぺんぺん草?』
意外にも答えてくれた彼の言うがままに、その草に目を向ける。生い茂った草の中に幾つかのぺんぺん草が生えている。『これ、確か音が出るんですよね』としゃがみ込み、軽く振ってみる。
『麗二様が草花に興味を持っていられたとは。これ、私も好きですよ』
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