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きっと彼は既に分かっていたからこそ引き離したのだろう。
この二人が惹かれ合っている事を。琥珀という少年がどんな子なのかは知らないが、麗二の顔を見ていたら分かる。彼がこんな表情をするくらい大切な子なんだ、と。
(……この子がこんなに物静かになったのは、その子が原因なんだ)
可哀想に。
αとΩ、惹きつけ合ってしまう運命を抱いているが為に、こんなにも苦しい思いをしなくてはならないなんて。自分はαだが「運命」なんて今迄出会った事も無いので彼に何と言えばいいか分からない。
(せめて……彼がこれ以上寂しく無い様に隣に居てあげねば)
沈黙の空気の中、私は密かにそう誓った。彼を側で支えると。
そして、いつか琥珀という少年と麗二が、また前みたいに笑い合って過ごしていた頃の様に出来る様に願おう。そう思いながら、私は彼と共に視線の先のぺんぺん草を眺め続けた。
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