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『……?顔を洗いにでも行ったんですかね』
小さく呟きながら静かに扉を閉める。
着替えも持って行っているのかな、なんて思いながら元来た道を歩き出す。暫く歩くと、見慣れた廊下が目に入り、数メートル先に開け放たれた扉から突然ある一言が聞こえてくる。
『秋人様、もう亡くなりそうって話、本当なのか?』
『!』
パッと、反射的に壁にくっつく様に隠れる。中をチラリと覗くと、この屋敷の家事を任されている内の一人である執事が言っている。不謹慎な、と顔を顰めていると、こちら側に背を向けている男は何故か笑いながら『そうみたいだ』と言い放つ。
『あんな老いぼれ当主、死んだも同然だよ』
(ーー……!)
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