𝐓𝐫𝐮𝐞 𝐋𝐨𝐯𝐞 𝟓

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馬鹿にした様な冷たい言い草にカッとなった私は、その男の顔を見てやろうと反対側の扉の方に回り、確認した。そうして確認した時、驚きの余り声が出そうになった。声の主は、いつも秋人様の隣で彼のお世話をしている瀬名竜巻であったのだ。 『このまま何事も無く、パーッと死んでくれたら次は俺が久遠家の次期当主になる事も夢じゃない』 『確かに…いくら麗二様がαと言えど、まだまだ子供だから、どちらかと言うと、あの人の仕事を側で見てきたお前なら任されるって訳だ。……成程な。お前αだもんな』 腑に落ちた様な表情で、相手の男も頷く。 何を、と拳を握り締めている間も、見られて聞かれているとは知らずに、クスクス笑いながら瀬名は愉しそうに続ける。 『あのお坊ちゃまは、大切な人を引き離されて只でさえ悲しみに暮れているというのに、家の肩書きのせいで学校では揶揄われるばかりの毎日。可哀想で仕方ない彼の代わりに、俺が当主になって久遠家のトップになる。優しいでしょう?』 最後の最後で、執事らしく上品に微笑んで見せる彼。 しかし、反対に私は酷く混乱していた。学校で揶揄われているって、その様な話を聞いた事が無い。もしかして、彼が個人的に瀬名に相談していたのか…なんて疑問が頭に浮かんだが、瀬名の次に発せられた言葉で合点がいく。
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