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『あの父親の仕事の手伝いのついでに学校に行って様子を見に行ったんだけど、まさかあんなに浮いていたとはね。でもおモテになるんだとか。金と性に目が眩んだ女が寄って来るんだろうなぁ』
『当主になれたら、何をしたいんだ?』
『うーん……先ずは、あの使用人…河瀬琥珀をモノにしたいね。お坊ちゃまのオキニだった子。あの子凄く可愛いし、すれ違う度良い匂いするんだよな』
『お前、その子未成年だろ!』
……私は、どうして気付かなかったのだろう。
麗二様の居心地の悪さの一つに、この件も含まれていたのだ。何も言ってくれない彼もだが、それに直ぐに察して声を掛けてあげられなかった私も、室長失格だ。
(こんな風に思っている執事が居たなんて。琥珀様の安全も、更に徹底しないと言わないと大変な事になる……)
早く、早く当主様にお伝えせねば。
その場で歯軋りをして、ふと気付く。直後、身体中の血の気が一気に引いていく感覚を覚えた。瀬名ともう一人の男は、私からして真ん中の方を向いて駄弁っている。つまり、向こう側、私が最初居た方の扉からだと、彼等の視覚には入らない為、存在は気付かれにくい。
(麗二様ーー………)
向こう側の扉の側に隠れる様に、麗二本人が口元を必死に抑え、声が出ぬ様震えているのが窺えた。泣かずに、ただジッと顔を青褪めたまま目の前の光景を眺めている。
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