episode 5

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「……何、で」 聞いた話は想像を超えるものだった。 開いた口が塞がらなくなった僕は、縺れるような声が喉の奥から僅かに漏れ出た。白雪さんは気まずそうに視線を逸らすと「私が不甲斐ないばかりに」と寂しそうに呟く。 「麗二様の一番側に居たのは私だったのにも関わらずーー…」 「白雪さんが自分を責める必要は無いです!白雪さんが居なかったら、麗二はもっと苦しんでいたと…」 麗二の寂しそうな背中が目の前に浮かび、泣きそうになる。何も知らずに自分の運命を受け入れて日々普通に過ごしている間、麗二は色んな重荷に耐えていたんだ。グッと泣くのを堪えながら俯くと、白雪さんは一息吐いて静かに続ける。 「当主を継ぐにしろ、継がないにしろ、麗二様は勉強の方では大変優秀なお方で、その他の事も難なく励んでおりました。でも……私が気付けなかっただけで、心は不完全のままだったのかもしれません。その為、その次の日から学校に行く事を止めて、家に、自分の部屋に……自分だけの殻に篭もる様になりました」
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