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自分の殻にーー…自分だけの世界に浸っていた麗二。
彼に何もしてあげられなかったと、自分の思いを伝える白雪さんが、僕につられて少しだけいつものポーカーフェイスが崩れ始めている事に気が付く。
「秋人様が亡くなり、一人ぼっちになった麗二様は益々引き篭もる様になり、現状は悪化していくばかりでした。ですが、不幸中の幸いを述べますと、次期当主は麗二様にする様にと、秋人様が遺言を残して下さっていたのです」
「……!」
「お陰で、瀬名竜巻は当主の座を諦めざるを得なくなりました。ですが、恐らく今でも座を狙っていると思われます。そして、貴方もーー……」
ジッと、怖い言葉と共に鋭い視線を向けられ、ビクッとなる。白雪さんは溜息を一つ零すと、再びカップを手にし、一口喉に通す。そして、ふぅ…と息を吐く様に「あの日、私は藁にもすがる思いで貴方に声を掛けました」と思い返す様に告げる。
「誰の命令でも無い。私は常に従順で有りましたが、初めて自分の意思で動きました。……麗二様の引き篭もりを直すキッカケをつくる為に。彼を変えられるのは、他でも無い、琥珀様、ただ一人だけですから」
「……僕は、変えられたでしょうか。麗二の事…」
麗二の、縋り付く様な視線や言動。今ならそれら全ての行動の意味がよく分かる。麗二はずっと助けて欲しかったんだと。離れてしまっていたが、またこうして出会えた。
「……変えて下さりましたよ。真っ直ぐな言葉を下さる琥珀様が、麗二様に影響を与えていたのは目に見えていました。貴方と居る時の麗二様は…見た事が無いくらい、柔らかい笑みを浮かべていました」
「!」
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