𝐓𝐫𝐮𝐞 𝐋𝐨𝐯𝐞 𝟏

1/26

1307人が本棚に入れています
本棚に追加
/304ページ

𝐓𝐫𝐮𝐞 𝐋𝐨𝐯𝐞 𝟏

『この人は僕の運命だ』 出逢った瞬間、真っ先にそう思った。運命を感じる際にそう思うのは、運命の醍醐味。しかし、この時の僕は目の前の彼を見て、そう思わずにはいられなかったのだ。そのくらい彼に惹かれてしまっていた。 _____ _________八年前 『自分の家だと思って、好きに過ごしてくれたら良い』 久遠家の当主である目の前の男は、凄んだ様子でそう告げた。彼の圧に押し負けそうになりながらも『有難う御座います』と何とか冷静に振る舞いながら頭を下げた。男の隣に立っていた同い年くらいの少年は真っ直ぐな瞳で僕を見据えていた。 ''久遠財閥'' 数々の企業と連帯し、財閥の中でも業績は華々しく、その財閥と関わった企業の業績は右肩上がりの状態で、凄まじい勢力をもたらしている。 そんな別世界の様な財閥の当主様の家に、どうして庶民であるこの僕が住む事になったかと言うと。簡潔に述べるとこの久遠当主の唯一の友が、つい一週間前に癌で亡くなった僕の父親だったから。 物心ついた時から母親が居なかった唯一の肉親を失ってしまった。悲しさに打ちひしがれていた僕は、父親の葬式で初めて、この当主の顔を見た。 『君は……アイツの…達弘の息子か』 『……誰ですか』 人見知りの僕は怖気付きながら返した。 かっちりした服を着こなした彼は、怖い見た目とは裏腹に、優しく目を細めながらしゃがみ込み、僕の頭に手を置いて優しく告げたのだ。『私の家に来なさい』と。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1307人が本棚に入れています
本棚に追加