泡沫の夢 〜異世界転生ものがたり〜

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 そうだペディだ。小学生の頃、ドット絵で表されたペディが女の子なのか男なのかで仲間内で議論した。懐かしい思い出だ。 「ありがとう、ペディ。でも俺は本編クリア後からやりこみ要素まで全部おさえてあるから大丈夫。君のサポートは必要ないよ」 「恐れながらヴォイド様。理想と現実というものは、かけ離れた存在ですよ。この世界を侮らないように」  ペディの言うとおりだった。ギルドに勇者として登録したものの、ゲームと違い仲間は簡単にできない。現実世界でも人望がなかったからこの世界くらい夢を見てもいいのに。  仕方なく左江内はレベルの低いモンスターを討伐していき、その日暮らしの生活を送った。  しかしコツコツとした作業が好きな左江内は効率の良い討伐方法を身につけ、自分のレベルも上がっていくにつれて、頼りになる仲間が増えていった。  そして今日、旅の目的であるドラゴンを討伐して世界が平和になったのである。  仲間たちとギルドに戻り肉や酒を愉しんでいたときに、ペディは非情な選択肢を左江内に突きつけたのだ。  左江内は仲間たちに断りを入れ席を立ち、ペディとともにギルドから出て、星空が美しい草原に座りこむ。 「なあペディ。お迎えの時間ってなんだよ。ゲームクリアしたら、俺は用無しってことかい?」 「いいえ、文字通り時間切れなのです。ヴォイド様。あなたはこの世界と現実世界の時間軸の差を知っていますか?」 「そんなもの考えたことなかった」 「簡単に言えばあなたの世界の一日が、こちらの一週間です。ここに来て三週間が経ちました。あなたの世界では三日です。ヴォイド様、いえ左江内様。あなたがあちらの世界でどのような最期を迎えたのか覚えていますか?」
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