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尊敬し合う二人
「違うよ」
フゥーとため息を漏らしながら、誉は続ける。
「いいか。まずは相手の気持ちを考えろって言ってるんだ。涼だって、クロエが全国目指して一生懸命努力してたのは知ってるだろ? そのクロエが、今どんな気持ちでいるのか、まさか想像出来ないなんて言わないだろうな?」
「そこまで鈍感じゃないさ……」
「なら、今日のところはクロエの気持ちを汲んでやったらどうだ? もし後日、今後のコンクールを巡る考え方に意見の違いが生じたなら、その時はまた冷静に話し合えばいいじゃないか。今はコンクールの意義について話し合う時じゃない。そう言うことだ」
誉も少し感情的になってきたようだ。
誉の顔が少しずつ涼の顔に近づいていることに、誉自身はまったく気づいていない。
「……わかったよ。きっと誉の言うことが正しいんだろう」
涼は自分の生き方を他人にあれこれ言われることを極端に嫌うところがある。しかし、誉の意見にだけは耳を貸すことが多かった。
これは誉の勢いに押されて自分の意見を曲げているのではなく、おそらく二人はお互いを尊敬し合っているのだろう。多くの部員はそのように考えていた。
「よし! じゃあ、みんなでクロエを探しに行こう!」
誉が力強く叫んだ。
こうして、2年生たちで協力してクロエを探すことになった。
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