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鷹峯 愛美
コンクール会場の片隅で、ひとり涙を流すクロエ。
「やっぱり。アンタまたこんなところで泣いてたのね」
建物の陰から、突然愛美の顔が現れた。
愛美はカンが鋭い少女である。
他人の表情の変化を見逃さず、その人物の心の動きをすぐに見抜いてしまう。
そのくせ、自分の感情はほとんど表に出さない。
さっきだって、本当は全国に行けなくて死ぬほど悔しかっただろうに、静かに涙を流して、ちょっと顔を歪めていただけだった。
愛美とも中学の吹奏楽部以来の付き合いだ。
中学3年生の時、校舎の裏でひとり泣いているクロエを見つけたのも愛美だった。
「クロエは相変わらずだね」
困ったような顔をして、それでも優しく微笑む愛美。
クロエはまた、中学3年生だったあの時に思いを馳せた。
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