彼の部屋

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彼の部屋

――その日の夜、ローゼフは自分のベッドで眠って熟睡していた。ふと寝返りをすると、右手が一瞬何かに触れた。 その妙な温かい感触に目を覚ました。 「うん……?」  ゆっくりと瞼を開くと隣にはピノが眠っていた。ローゼフは驚いて起き上がると叩き起こした。 「おい、起きろ!」 「ムニャムニャ…う~ん。ローゼフ~まだ駄目だよ~いきなりそんな~エヘッ……」  ピノはベッドの上で大の字になりながら幸せそうな夢を見ていた。 「なんだこの子は……!? 一体どんな夢を見ているのだ…――!?」  ローゼフはワナワナするとピノを揺り起こした。 「コラ起きなさい!」 「エへへ…触っちゃ駄目だってば~~」 「早く起きろーっ!!」  突然大きな声で怒鳴られると、ピノはパッと目を覚ました。 「う~ん、ローゼフなぁに?」  ピノは眠たい目をこするとキョトンとした。 「ピノ! 寝るときはベッドの下か、鞄の中に隠れてなさいと教えただろ!?」 「だってだって~! ベッドの下、暗いんだもん! オバケが出てきたらボク食べられちゃうよ!!」 「まったく、オバケなんているわけないだろ……! もしあいつに見つかったらどうするんだ!?」  ローゼフは呆れると叱った。 「ベッドが駄目なら、お前が入っていたあの鞄があるだろ?」 「やだよぉ! ボクはローゼフと一緒に寝たい!!」  ピノは涙目で訴えると、そこで突然泣き出した。 「ワガママを言うんじゃない!! 私はよくても他の使用人達はお前の存在を知らないんだ! もし誰かに見つかったら騒ぐに決まってるだろ!?」  ローゼフは怒りながらそう言って説明した。だが、ピノは素直に言うことを聞かなかった。一緒に眠りたいと言って駄々をこねた。 「そっ、それにパーカスがお前を見たら、きっと気絶するに決まっている! 何せお前は人形なんだからな…――!?」 その言葉にピノはガックリと肩を落として悄気た表情をみせた。 「ガッカリしてもダメ! いじけてもダメ! 悄気てもダメだ! とにかくダメなものはダメだ!」  間髪を入れてダメだと言い切った。するとピノは、大きな瞳に涙を浮かべると大声を出して泣き出した。 「わぁあああん! ローゼフはボクのこと嫌いなんだ! 何で一緒に寝たらいけないの!? 一人ぼっちじゃ寝れないよ! ローゼフと一緒に寝たいよぉ!」  ピノは悲しい声で大きな声で泣いた。ローゼフは困った顔をすると言い返した。 「私を困らすな! 私だってお前と一緒に寝たいさ、でも見つかったらまずいんだ! だから今は我慢してくれ……!」  彼がそう言って説得して話すと、ピノはピタリと泣き止んだ。 「ひっくひっく…。わがまま言ってごめんなさい…。いい子にするから嫌わないで……?」  ピノは泣きべそをかきながら抱きついた。彼は胸の奥が急に締め付けられるとピノに優しく話しかけた。 「すまん…。私こそあやまるべきだ。お前は人形でも人間の5歳児の子供とは変わりはない。一人ぼっちで寝るのが寂しいのはわかる。私がお前とおなじくらいの子供だったら寂しいのは当然だ。今は無理だが何とかしてみる。だからわかってくれるな…――?」  そう言って説得するとピノは小さく頷いた。 「ひっく…わかった。でも、いつかは一緒に寝ようね? ローゼフ、約束だよ……?」  ピノは大きな瞳をウルウルさせながら涙を堪えた。 「ああ、もちろんだとも…――。ピノがお利口さんで助かるよ――」  彼はそう言って褒めるとピノの頭を優しく撫でた。
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