髪飾り

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「――では、母上の無くした髪飾りをあの子はどうやってみつけたのだ?」 「ピノは今日、鏡の前にいたらマリアンヌ様の霊に会ったと私に話しました。そして、マリアンヌ様は髪飾りを探して欲しいとピノに頼んだのです」  パーカスの話しにローゼフはいきなり取り乱した。 「何をバカなことを……!? 母上の霊が鏡に映っただと…――!?」 「ええ、そうです。ピノは私にそう話しました」 「馬鹿げている! 母上がピノに髪飾りを探せと命じただと!? 何故ピノなんだ……! 何故わたしではなく、ピノに母上は話しかけたのだ!?」 「ローゼフ様、どうか感情的にならないで下さい!」 「うるさい黙れ! 貴様に何がわかる!? こんなにも母上に会いたいと願っているのに、何故わたしではなくピノなのだ!?」 「ローゼフ様……」  彼は感情的になると激しく憤りをぶつけた。 「恐らく私が思うにですが、恐らく我々には理解できない能力をピノは秘めてるのだと思います。何せピノは生きた人形です。他の人形とは違うのです――」  パーカスのその話にハッとなって我に返ると、彼はそこで自分の気持ちを落ち着かせた。 「そうだな……。ピノは私の愛玩ドールだ。そして、生きた人形だ。他の人形とは違う。その通りだな」 「ええ、そうですともローゼフ様」 「私はピノになんてことをしたんだ……。きっと今頃恨んでるに違いない。私はなんて愚かなんだ。あんな幼い子に酷い仕打ちをするなんてどうかしている!」  彼は自分がしたことに初めて後悔した。 「さっき鏡と言ったがその鏡とはまさか、あれのことか?」 「ええ、恐らくそうだと思います」  パーカスがそう言って答えると、ローゼフは自分の部屋から出て行き、ある部屋へと真っ先に向かった。そこは彼が買って集めた骨董品を置いているコレクションルームだった。ローゼフは部屋の中に入ると、ある物を探した。 「これか……?」 「ええ、恐らくこれでしょう…――」  2人は大きな鏡の前で見上げて佇んだ。その鏡は、年代物のビクトリアン様式のデザインだった。古ぼけた鏡の前には白い布が被されていた。ローゼフは手を伸ばすと、その布を掴んで払いのけた。 「フォントボーの鏡。通称、霊魂の鏡と言われている物だ。フォントボー家の領主が、この鏡を使って霊との交信をしていたと伝わるものだ。コレクターの間では、いわくつきの物と聞いている。アーバンからこれを買って試してみたが鏡には何も映らなかった。それどころか霊との交信も叶わなかった――」  彼はそう話すと、ふと悲しげな表情で思い詰めた。
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